一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第6回)次々に湧くアイデア=院長らにアピール

 ◇テレビ特番で予約殺到

 2006年12月には、フジテレビが特番の取材にやって来た。全国のスーパードクターを5人紹介する内容で、石部氏は番組の最後に登場した。

 「僕の前が心臓血管外科医で、手術で患者さんが亡くなってしまったんです。放映された後、新聞のニュースにもなりました。その次が僕の番。人工股関節置換術を受けた患者が痛みが取れて幸せになる、という明るいハッピーエンドで終わりました」

 放送があったのが金曜日の夜。翌週の月曜日になると、全国から手術の予約が殺到した。

 「事務の人に『電話がつながりにくくなるかもしれないから気を付けた方がいいですよ』と言ってあったのに、『うちはNTTですから大丈夫ですよ』と。でも、結局パンクして、私のホームページもアクセス不可になりました」

 ◇手術は2年半待ち

 NTT病院では手術室を他の診療科と合同で使うため、人工股関節の手術ができるのは最大で週5件。年間250件が限度だった。手術はあっという間に2年半待ちになり、外来の予約すら取れない状況になってしまった。

 「予約の電話受付の女性が、『やっと電話がつながったら予約が取れないと説明しなければいけない。ずっと怒られてばっかり』といって辞めてしまったんです。予約システムを変えてみても、やはり週に5件しかできない状況では、どうにもなりませんでした」

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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