一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第7回)外来はクリニック、手術は病院=欧米流で開業へ

 痛みを抱えながら、手術を待っている患者がいる。それが開業に踏み切るきっかけになった。ただ、費用面の問題があった。

 「できるだけ手術ができるような環境を自分で整えようと思ったものの、手術を行う施設を自前で準備するには金が掛かり過ぎる。何億円もの借金を抱えるのは嫌ですから」

 そこで、クリニックで診察し、手術は協力してくれる病院の手術室を使って行うという方法を思い付いた。米国や英国では、ごく一般的な方法だ。日本でも、紹介患者の手術を行う病院に紹介元の開業医が出向いて手術後の回診をするオープンシステムを導入している病院はある。しかし、石部氏のようなスタイルはあまり例を見ない。

 ◇病院とウインウインで

 「手術件数が減り手術室が空いている病院は結構あって、コンサルティング会社が候補を見付けてきてくれました。手術室を提供するだけで、患者さんを集める必要もなく、病院には入院費が入る。僕も相手の病院も『ウインウイン』の関係というわけです」

 米国では民間保険会社からまず医師に金が支払われ、医師が病院に施設費や入院費などを支払う。日本は医療保険制度が異なるため、石部氏の場合は病院に診療報酬が支払われ、診療委託契約に基づいて石部氏に手術料の一部が支払われる。

 「過去に例がなかったので、契約のスタイルも自分で考えました。留学先から帰った後も手術の見学などで毎年海外に行く機会があり、経営についても学んできました。もちろん、開業を考えて準備していたわけではありませんが、クリニックのデザインなどにも向こうで吸収したことを生かしています」

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一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏