一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第9回)感染対策を徹底=患者のために妥協せず

 石部氏のクリニックでは手術前の検査、術後の定期検診を行い、手術は協力病院(現在は札幌外科記念病院)で実施する。この時に、クリニックと病院での対応に極力、落差がないようにしなければならない。

 「入院期間が短いとはいっても、患者さんが10日間過ごすわけですから、協力病院になっていただく際に、こちらでお願いする条件を具体的に出しました」

 ◇手術室を最重視

 最も重視したのは、手術室の環境だ。手術を安全に行うための基本的な条件として、手術室の感染予防対策を徹底するよう要望した。

 「人工関節は感染を起こすと再手術のリスクが高くなります。感染ゼロを目指しているので、クリーン度を上げるために手術室の換気システムをよりレベルの高いものに交換してもらい、「防護服」も用意してもらいました」

 石部氏をはじめ手術室のスタッフ全員が身に着ける防護服は、まるで宇宙飛行士が船外活動を行うときのように重装備だ。防護服全体がフィルターになっており、ヘルメットのようなヘッドギアの内側に換気扇が取り付けられ、排気はすべてフィルターを通ってきれいな空気になって外へ流れ出る。

 「動きにくくなるので着るのを嫌がるドクターもいますが、人工股関節の手術を安全に確実に行うためには不可欠な対応です」

 手術を受けた患者が快適に過ごせる環境の整備でも妥協しなかった。病室の壁紙を張り替え、トイレをバリアフリーにした。クリニックの患者専用の病室がある2階にはシャワー室を最低2室設置し、洗面台は新しくした。

  • 1
  • 2

一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏