一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏
(第10回)まるで武道の達人=迅速な手術、患者の負担減
臼蓋の削った部分に、カップをネジで固定し、軟骨の役割をするポリエチレンを挿入。一方、大腿骨の側は内部を大腿骨髄腔リーマーで削り、大腿骨ステムを挿入するスペースを確保する。
「骨がもろい高齢の女性の場合、力を入れてハンマーでたたくと骨が割れてしまう危険性があります。このため、ウッドペッカーという上下に振動する特殊な器械を使い、ダメージを与えないようにします」
◇手術後8日で退院
レントゲン画像で見ると、股関節が悪い方の脚の骨は健康な方と比べ、薄くなっているのが分かる。
「股関節が悪い方の脚はかばってしまうので、負荷がかかりません。骨密度が低下した宇宙飛行士が帰還した時に歩けなくなってしまうのと同じで、負荷がかからないと骨も弱くなってしまうのです」
準備が整ったら、まずテスト用の仮の人工股関節を入れて脚を動かし、曲げたり、ひねったりすることがスムーズにでき、かつ安定性があることを確認。その後で、チタン製の大腿骨ステムとセラミック製の大腿骨頭を装着する。
手術中の軽快な身のこなしと鮮やかな手さばきは、さながら武道の達人を思わせる。腰を入れて力をこめる、全身を使って行う手術だ。
メスを入れてから約30分で人工股関節の設置が完了。縫合する時間を入れても、麻酔がかかってから手術が終了するまでに40~50分しかたっていない。
病棟には、この手術を受けた患者が常時20数人いるという。4月に新たに増設したリハビリテーション室では、術後の患者が理学療法士(PT)の指導を受けながらリハビリに励む姿が見られた。
「午前中に手術をした患者さんは、その日の午後から起立・歩行訓練を開始します。手術後8日目には、つえを使って階段の上り下りもできるようになって退院します」
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(2017/06/30 14:35)