一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(第6回)型破りの「文武両道」 =苦手克服より得意分野

 「勉強ができるだけの偏差値エリートには負けない」「早く一人前になって患者さんを助けたい」。熱い思いで医学部に入学した天野氏は、浪人時代とは打って変わって勉強熱心な学生になった。

 「いざ入学してみると、自分よりはるかに勉強ができない学生がたくさんいて、3浪だからといって、自分が能力的に劣っているとは決して思わなかった。だから絶対に留年しないと決めたんです」

 ただ、授業に毎回出席し試験対策のため勉強を満遍なく行い、無難に良い成績を収めるタイプではなかった。教科書には載っていない新しい手術方法を見いだすような外科医が、型通りの勉強から生まれるはずもない。

 「苦手なことを克服することに時間を費やすよりも、自分の得意分野を究めた方が将来役に立つと思い、朝から図書館に行って、自分の好きな勉強だけをしていました」

 研修医が読むような医学雑誌を読んで、米国の新しい研修医制度の情報も得ていたことが、後に自分で研修先を決めるときに役立つことになる。

 ただ、大学のカリキュラムに沿わない自分なりの勉強をしていたため、試験前は友達のノートが頼りだった。試験期間のプレッシャーが相当強かったせいか、この頃のことがいまだに夢に出てくるという。「今年から問題の傾向が変わったのに古いノートしか手に入らなくて、他の連中に『お前はいつも一人で行動しているから、違うノートしか手に入らなかった』と笑われている夢や、試験のヤマが完全に外れた夢とか…」と笑う。ノートのコピーを借りていた医学部時代の同級生には、いまだに頭が上がらない。

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一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏