女性アスリート健康支援委員会 諦めない心、体と向き合うプロ意識

10代から自分の体に向き合おう
健やかな人生へ、無月経の啓発も課題―ヨーコ・ゼッターランドさん


 ◇生涯のQOL高めるために

 ラグビーワールドカップ2019のドリームサポーターも引き受けた。2017年の大会日程発表会で
 ゼッターランドさんは日本スポーツ協会で、指導者養成に関する職務も担当する。スポーツの現場では、自らが経験したような女性指導者の割合は、まだ低い。中学や高校の部活でも、指導者の多くは男性。月経のような女子選手の体調のことになると、話を聞くことをためらい、「聞くとセクハラだと思われる」と心配してしまう場合がある。

 女子選手の方にも、面と向かって男性指導者に相談しづらい空気がまだある。「相談することをためらって、大事な問題が潜在化し、問題が大きくなってから慌てることがないといいな、と思っている。体の知識だけを増やすのではなく、セクハラ・パワハラ的な指導とそうでないものの境目を区別して、何が大事かを判断する仕方も教えないといけない」と語る。

 女性のライフサイクルという観点から見たとき、スポーツは思春期だけでなく、妊娠・出産期を経て高齢期に至る生涯にわたる生活の質(QOL)にも深く結び付いている。「スポーツを入り口として、正しい知識を持って体と向き合っていく。どんな形でもよいから体づくりを続けることが、QOLの高さにつながります」。そのためにも、十代のうちから正しい知識を身に付けることが大切だ。

 ◇「体を知ることは楽しい」

 2020年の東京五輪・パラリンピックは、男女を問わず、スポーツ参加をさらに広げていく好機だ。スポーツ庁は、ジュニアからシニアまで、ライフステージに応じたスポーツ活動の推進とその環境整備を進める方針。成人のスポーツ実施率を「週1日以上」で65%程度、「週3日以上」で30%程度まで上げることが目標だ。

 日本スポーツ協会も、実施率を上げるために奮闘している。ゼッターランドさんに、一般のスポーツ愛好者やこれからスポーツをやろうとする人たちへのメッセージを聞くと、少し考えてから、「自分の体を知ることは、本当に楽しいですよ」という答えが返ってきた。

 

 1998年の全日本選手権優勝後の祝勝会で母、堀江方子(まさこ)さん(右)と。「バレーボール一筋の人生でした」という母の教えは今も胸にある(ゼッターランドさん提供)
 「自分のため、家族のため、誰かのために健康でいたい、というように、きっかけはいろいろある。体を鍛え、動かしていくと、何かしら変化がある。今まで気づかなかったことに気づく面白さがあります」

 年齢を重ねるにつれ、思い通りに動かなくなる体の変化を受け入れていく必要も出てくる。その変化をマイナスと捉えずに、しっかり向き合うことの大切さも実感している。「体に向き合うことは、生きていく上での大きな資本にもなります」とアドバイスするゼッターランドさん。あらゆる人々がスポーツに親しむ社会の実現に向けて、その幅広い経験を生かすことが求められている。(了)


◇ヨーコ・ゼッターランドさんプロフィルなど

◇五輪の夢追い渡米、メディカルチェックに驚く(諦めない心・体に向き合うプロ意識・上)

◇アトランタの「ミッション・インポッシブル」(諦めない心・体に向き合うプロ意識・中)



  • 1
  • 2

女性アスリート健康支援委員会 諦めない心、体と向き合うプロ意識