女性アスリート健康支援委員会 失敗から学んだ女子指導の鍵
若手の潜在力引き出すベテラン
ママさん選手にも期待―柳本晶一さん
◇怒声に込めた二つの意味
ベテランが若手の力を巧みに引き出す。若手がベテランの闘争本能を呼び覚ます。そんな関係に持って行くまでには、繊細な気遣いも必要だった。
「吉原も竹下もみんな、メグカナが育つことで時代が変わるのは分かっとるんですよ。この子らが頑張って、自分たちとコラボをしたら、絶対に次代の扉は開けるんだと。でもあまりにも(周囲が騒いで)メグカナ、メグカナとなるとね。やっぱり女性心理としては面白くない。『何言ってんのよ、私たちがいなきゃ駄目じゃない』と。根を詰めて練習していると、空気がとげとげしくなってくるんですよ」
そんなときに柳本さんは怒声を響かせ、練習姿勢が消極的だったホープに活を入れたのだという。「何が大山じゃ。おまえの(オリンピックに出たいという)夢になんか付き合っていられるか。ええ加減にせえって。メグ、おまえもじゃ、と。今だから種明かししますけどね。僕が(ベテラン選手の胸中を)代弁せなあかんわけですよ(笑)」
ベテラン選手のガスがスーッと抜けたのを柳本さんは感じたという。ベテランが大山らに励ましの言葉を掛けるようになり、戦う集団ができていった。さまざまな強い個性が融合したのではなく、「結合」したのだという。
「何かのきっかけでころっと変れるのが選手。それを変えてあげられるのは指導者ですわ」。心を開かせ、厳しい練習に意欲を失わせないための工夫が、苦境にあった全日本女子の再生へとつながった。
◇五輪の経験、次世代につなげて
ベテラン選手の役割は今の全日本女子にも必要だ。2018年10月に日本で開催された女子バレーボールの世界選手権では、34歳の荒木絵里香が存在感を示した。
荒木は2008年の北京から12年ロンドン、16年リオデジャネイロと五輪に3大会続けて出場した。14年に第一子を出産し、ママになっても競技生活を終わりにせず、チームに戻って再び大事な力となった。
柳本さんは、荒木にもう一踏ん張りしてほしいという。「まだ2年ぐらいはやれます。こないだも『おまえ、頑張らないかん』と言いました。オリンピックというのは、2回、3回と経験して分かることもある。それをね、次の世代につなげていかなあきません」(冨田雅裕)
◇心開かせた「再建請負人」 もっと出てほしい女性指導者(失敗から学んだ女子指導の鍵・上)
◇成長の瞬間追い求め 十人十色の選手、栄養管理にも工夫(失敗から学んだ女子指導の鍵・下)
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(2019/02/16 07:00)