治療・予防

慢性閉塞性肺疾患に新治療薬
~初の生物学的製剤~

 慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)は、たばこの煙などの有害物質を長期間にわたって吸入することで、気管支や肺に炎症が起こり、呼吸機能が低下していく病気だ。喫煙が主な要因であることから「肺の生活習慣病」とも言われている。そんなCOPDの治療薬として初めての生物学的製剤となるデュピルマブが承認された。

奈良県立医科大学の室繁郎教授

奈良県立医科大学の室繁郎教授

 ◇初期は発症に気付かず

 COPDの国内患者数は約530万人と推定されているが、実際に治療を受けている患者は約36.2万人にとどまる。2023年の死亡者数は1万6941人だった。

 体を動かしているときの息切れや、慢性のせき・たんといった症状が表れることが特徴で、初期症状が軽微で、発症に気付かないケースも多い。奈良県立医科大学呼吸器内科学講座の室繁郎教授は「早期の時点で医療機関に来る患者はまれで、日常生活に困るぐらいにまで息が切れるようになってから受診することが圧倒的に多い」と指摘する。

 日本呼吸器学会は死亡率の減少に向け、早期受診の促進や、専門医の診断率向上と適切な治療に向けたプロジェクト「木洩れ陽2032」に取り組んでいる。室教授は「傷んでしまった肺は完全には元に戻らない。できるだけ軽症のうちに食い止めることが非常に重要になる」と訴える。

 ◇日常生活に支障

 製薬会社のサノフィがCOPD患者200人を対象に行った調査では、日常生活で身体的な苦しさを感じている割合は軽症では70.7%、中等症以上では93.1%に上った。負担がかかる場面として最も多かったのは「階段の上り下り」で、中等症以上になると「歩行」「掃除」「買い物」「入浴」なども増えた。ただ、苦しさを感じた場合に家族や周囲に助けを求める患者は1割未満にとどまった。

 精神的負担を抱えている患者は軽症で60.0%、中等症以上では87.9%に達し、「喫煙への自責の念」「呼吸困難への不安」などが上位となった。その対応方法としては「考えないようにする」「ひきこもる」が多かった。負担と感じるようになったきっかけは「できていた動作がしんどくなってきた」が最も多く、次いで「医師から良くならない病気だと言われた」だった。

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