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増える女性アスリートの膝前十字靱帯損傷
リスクの男女差知り、予防を意識したトレーニングを 【オンラインセミナー応援企画】

 スポーツによるけがには「起こりやすさ」に男女差があるものが多い。膝の前十字靱帯(じんたい)損傷は、女性アスリートの発生頻度が高いことで知られる。下手をすると選手生命を絶たれかねない重傷で、復帰するためには多くの場合、手術が必要になる。

  患者の数は女性のスポーツ人口拡大とともに増加傾向だ。サッカー男子U―19(19歳以下)日本代表でチームドクターを務める東大医学部附属病院整形外科の武冨修治医師(スポーツ整形外科)は「どういうリスクで起こるのか、どういう選手に起こりやすいのかを知って予防してほしい」と話し、男女差を踏まえたトレーニングなどの必要性を訴える。

 ◇男性より大幅に多いけがの頻度、手術必要な重傷

女子サッカーのトレーニング風景より

 スポーツによるけがは、大きく分けると2種類ある。一つは靱帯損傷やねんざ、肉離れ、脱臼のように瞬間的に大きな力が加わったことによるスポーツ外傷。もう一つは繰り返し負荷がかかることによって生じる腱炎などのスポーツ障害。その中間に位置するのが疲労骨折などのけがだ。

 武冨医師は「男性と女性では、予防に気を付けなくてはならないけがは変わってくる」と説明する。例えばサッカーでは、太ももの後ろ側の筋肉「ハムストリング」の肉離れは男性の方がよく起こる。これに対し、前十字靱帯損傷は「国内外の調査報告をみると、女性は男性よりも平均で5倍前後、発生頻度が高い」という。

 膝の関節は、大腿骨(だいたいこつ=太ももの骨)と脛骨(けいこつ=すねの骨)、膝蓋骨(しつがいこつ=膝のお皿)の三つの骨で構成される。前十字靱帯は、大腿骨と脛骨をつなぐ4本の主な靱帯のうちの1本で、膝の真ん中に位置し、膝下の脛骨が大腿骨に対して前方にずれないよう安定を保つ役割を果たす。

膝の靱帯(「家庭の医学」の図解を基に作成)

 しかし、脛骨が前方に向かおうとする力によって、耐え切れないほどの強い負荷がかかると、この靱帯は伸びたり切れたりしてしまう。いったん切れると、自然治癒力はなく、放置すれば膝が不安定なままの状態になる。「基本的にはカッティング動作(急速な方向転換の動作)を含むスポーツには復帰できなくなるので、靱帯再建の手術が必要になる。試合に戻るまで8カ月から9カ月ほどかかる」と武冨医師は話す。

 ◇急な停止や方向転換、ジャンプの着地の際に受傷

 男性の場合、接触型といって、ラグビーやアメリカンフットボール、柔道のような競技の激しい接触プレーの結果、前十字靱帯を損傷するケースも目立つが、女性の場合は自分の動きの結果としてけがをする非接触型が多い。

 「急な停止や方向転換、ジャンプの着地といった動作の失敗で起こりやすい。こうした動きのあるサッカーやフットサル、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、ハンドボールなどで多い」 という。

 年齢を問わず、誰でも注意する必要のあるけがで、特に高校生、大学生に多いが、ママさんバレーボールの選手にも起こる。「他のけがも含めて、人工芝や改良されたシューズで地面・床をつかむ『グリップ力』が利き、素早くターンできるようになった分、足や膝への負担も増えたことが、けがの一因になっている印象がある」という。


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