女性アスリート健康支援委員会 宮嶋泰子、女性アスリートを大いに語る
トップ選手に多い生理不順
~「アスリートこそ定期的に婦人科でチェックを」~ ―女性トップ選手の苦心・奮闘を密着取材 宮嶋泰子氏―(3)
リオ五輪 女子7人制ラグビーの日本代表
◇前十字靭帯損傷の要因は出産後の骨盤の広がり
―女性と男性では当然身体の構造が違います。
「トレーニングのプロセス、筋肉の強化って男性と女性とでは大して変わらないと思うかもしれませんが、『ママになってもスポーツがしたい』というシンポジウムで、7人制ラグビーの日本代表で16年リオデジャネイロ五輪に出場した兼松由佳さんの発言が衝撃的でした。彼女はママさん選手ですが、出産した後、前十字靭帯を何度も切っています。これは女性の身体の特徴からくるものなんですね。早大の福林徹名誉教授によれば『女性は骨盤が広くできているから、どうしてもX脚になりがちで、靭帯を切りやすい』とのことです。ニー・イン・トゥ・アウト、これが前十字靭帯を切るケースが多い状態です。ニー、膝が中に入って、アンクル、足首が外に向くケースです。女性が前十字靭帯を切る比率は男性の5倍から8倍と言われています。なぜこんなことが起きるのかというと、男性の場合は接触とか物理的衝撃で前十字靭帯が切れてしまいますが、女性は自損が多いのです。ターンをした際や、急に動いたときに切ってしまいます。もともと骨盤が広い選手の場合や、また出産のときに骨盤が広がったことが理由です。骨盤矯正は出産後の女性選手で一番必要なことです。これをやらないとフィギュアスケートでは回転ができなくなります。女性アスリートのトレーニングの中で骨盤に対する意識もあまりないですね。これが大変重要で、特に回転系の競技は重要となります」
―私の勉強不足もありますが、このようなことは知りませんでした。
「なぜ、このような話をしたかというと、生理だけでなく、女性と男性の違いというのが骨格からしてあるので、トレーニングのプロセスとかも当然違ってくるわけです。だから本当は女性用のトレーニング方法を開発しなければならないし、それ専用の研究もしていかなければいけないにもかかわらず、『陸連さん、どうしたの』という思いはありますね」
サッカー女子W杯・ドイツ大会で初優勝を決め、喜ぶ「なでしこジャパン」(EPA=時事)
―女性の社会進出や男女平等も大切ですが、体のつくりが男性と女性とでは違うので、その意味での平等はないですね。
「司会の方のように男性ですと、前十字靭帯を切るのが女性に多く、だから女性が弱いと思う人だっていますし、女性がスポーツをすることを長い間禁止されてきたのは、そういう理由だと思ってしまうかもしれません。そうではなくて、それ相応の準備運動とかすればいいわけです。今、国際サッカー連盟(FIFA)には『The11+(イレブンプラス)』というのがあり、ウェブサイトでも見ることができます。イレブンプラスの中には、前十字靭帯をストレッチ等でしっかり伸ばして強化するトレーニング方法が書いてあります。いろんなデータから女性はこういうことをした方がいいという教えが示されており、女子の『なでしこジャパン』でも活用されています。こういうことが、とても大切で重要となります」(了)
宮嶋泰子(みやじま・やすこ) テレビ朝日にアナウンサーとして入社後、スポーツキャスターを務め、スポーツ中継の実況やリポート、ニュースステーションや報道ステーションのスポーツディレクター兼リポーターとして活躍。 1980年のモスクワ大会から平昌大会まで五輪での現地取材は19回に上る。2016年に日本オリンピック委員会(JOC)の「女性スポーツ賞」を受賞。文部科学省中央教育審議会スポーツ青少年分科会委員や日本スポーツ協会総合型地域スポーツクラブ育成委員会委員、JOC広報部会副部会長など多くの役職を歴任。20年1月にテレビ朝日を退社、一般社団法人カルティベータ代表理事となる。
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(2022/10/21 05:00)
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