こちら診察室 学校に行けない子どもたち~日本初の不登校専門クリニックから見た最前線

発達障害と不登校の関係
~実態と課題~ 【第9回】

 ◇支援体制の在り方

 Patelらの研究では、神経発達障害のある子どもは学期間の長期の休み中に何らかの危険行為によって入院する可能性が学年度中と比較して1.33倍高くなるとされ、日常的な構造と支援の喪失が、これらの子どもたちの行動と適応に重大な影響を与えることを示唆しています[13]。

 ◇学校での支援の重要性

 さらにPatelらは、日常的な構造と支援の維持が極めて重要としています[13]。特に以下の点に注意を払う必要があります:

 ・予測可能な日課の確立

 ・安全で快適な学習環境の提供

 ・必要に応じた柔軟な対応

 発達障害のある子どもたちの不登校に対する支援は、その複雑な要因を考慮した包括的なアプローチが必要とされます。Kuritaによると、発達障害の子どもの不登校には、以下の二つの要素が不可欠としています[5]:

 ・親によるポジティブな関与

 ・教師による快適な学校環境づくり

 発達障害の特性に配慮した学校環境の整備は、子どもたちが安心して学校生活を送るために不可欠です。気質的要因や学校要因が不登校に大きく影響していることを踏まえ、以下のような具体的な対応が考えられます:

 ・感覚過敏に配慮した教室環境の調整(例:刺激の少ない空間の確保、イヤーマフの使用許可)

 ・個々の学習スタイルに合わせた指導方法の工夫(例:視覚的支援の活用、課題の細分化)

 ・特別支援教育の積極的な活用

 ・教職員への発達障害に関する研修の実施

 また、Totsikaらの研究では、親と教師の関係が良好である場合、欠席率、不登校、退学率のいずれもが低下することが示されています[1]。

 ◇家族支援の重要性

 Sheverbush & Sadowskiの研究では、家族全体を支援の対象とすることの重要性が示されています[14]。この研究で実施されたプログラムでは、家族全体を対象とした包括的なアプローチを採用し、セラピストによる家族療法を実施しました。その結果、大多数のケースで学校への出席率が著しく改善または満足できるレベルとなり、成績も向上したとされています。

 ◇おわりに

 発達障害のある子どもたちの不登校問題は、個人、家族、学校、社会の各レベルで複雑に絡み合う課題であることが、これまでの議論から明らかになりました。

 Strombergらの研究が示すように、発達障害の重症度と不登校には明確な相関関係が存在します[3]。しかし同時に、Totsikaらが指摘するように、適切な支援体制の構築により、この問題は大きく改善する可能性を秘めています[1]。

 ADHD、ASD、LDなど、各発達障害の特性を理解し、個々のニーズに応じた支援を提供することが、不登校の予防と改善につながります。発達障害の特性を理解し、それぞれの見え方や感じ方に寄り添うことが、学校や社会における支援の第一歩となるのです。

 今後の課題として、以下の点が挙げられます:

 1. 早期発見・早期支援システムの確立

 2. 家庭と学校の協力体制の強化

 3. 個別支援計画の充実

 4. 専門家チームによる包括的支援の実現

 5. 継続的な支援体制の整備

 発達障害のある子どもたちの不登校への対応は、単なる出席の促進ではなく、その子どもの教育全体を見据えた長期的な視点が必要です。学校、家庭、地域社会が一体となって、子どもたち一人ひとりのニーズに応じた支援を提供していくことが、彼らの将来を切り開く鍵となるでしょう。(了)


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