ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

赤・青・緑のバランス調整―補正レンズ
~色の受容感度を均等に~ 【第7回】

 ◇逆型で疑似体験

 外国人が色覚補正用のレンズを掛け、その効果に膝から崩れ落ちるほど感動し、プレゼントしてくれた家族を抱きしめながら泣いて喜ぶという動画がネット上でたまに流れてきますが、完璧に演技です。断言します。泣いて喜ぶのであれば色覚特性に相当苦労したはずですが、それほど強度の人は掛けた瞬間に世界が変わることはあり得ません。「すごく派手なサングラスだな」と思うのが普通です。繰り返しになりますが、仕事で一時的に使うならまだしも、常時身に着けていられるものではありません。

 それよりも私がいいと思うのは、ネオダルトン社が作っていた、緑を少しだけカットしてあげる「逆補正レンズ」です。いわば色弱を体験できるレンズで、同社のレンズが試着できるお店ならほとんど置いてあると聞きました。自分の子どもが当事者なら、親は何かできることはないか模索したいと思うのではないでしょうか。それを体感できます。

 逆補正レンズの実物を見たことがありますが、正直に言うと、色覚特性を持っている人の目にそれほど近づくものではないと思っています(レンズの反射や映り込み、照り返しが強いので、結局サングラスのような視界になってしまいます)。それでも親心を考えると、疑似ながら子と共通の体験ができるツールとして価値があると思います。また、最近はスマホの体験アプリもかなり進化していますので、そちらでもよいかもしれません。

 私が皆さんの見ている鮮やかな世界を知らないように、皆さんは私のセピア色の世界を見たことがありません。「あなたの世界では何色に見えているの?」と聞かれても、私は皆さんの見ている色を見たことがないので説明できません。どんな事柄でも当事者でない限り、なかなか理解してもらえません。次回は当事者の声で「色覚あるある」をいくつかご紹介します。お楽しみに!(了)

 〔お断り〕この連載では、文章の趣旨を的確に伝えるため、現在は使用を控えるようになった「色盲」「色弱」という言葉を必要に応じて用いています。

 長瀬 裕紀(ながせ・ゆうき) 1級眼鏡作製技能士。過去に量販眼鏡店に就職するも勉強不足を痛感。修行のため眼科コメディカルとして10年弱勤め、年間3500人以上の目のケアに携わる。認定眼鏡士SS級のプロとして現在は吉祥寺の眼鏡店(グラストリーイカラ https://www.g-ikara.jp/)で勤務し、2022年度から始まった国家資格「眼鏡作製技能士」の試験に合格した。自身の体験談を踏まえた色覚特性のブログが人気を博し、数多くの問い合わせや相談が寄せられている。

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