ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

赤・青・緑のバランス調整―補正レンズ
~色の受容感度を均等に~ 【第7回】

 皆さんはブルーライトカットのメガネを使っていますか。私の勤めているお店でもニーズは高く、約半分の人がレンズにオプションとして付けるほどの人気です。販売する際には用途などについて極力説明はしますが、「目に良いなら取りあえず入れておきたい」と漠然としたイメージで買う人も少なくありません。もちろんパソコンもスマホもほとんど使わない、あるいは眼精疲労を自覚していないといった人にはあえて付けないことを勧めたりもします。最近では白内障や加齢黄斑変性の予防になるとして、新しいブルーライトカット「UV420」というものも出ています。興味のある人は調べてみてください。

 こんにちは、長瀬です。いきなり商売っ気を出したような語り口で始まりましたが、そうではありません。この例えを持ち出したのは、きょうお話しする予定のレンズ、ネオダルトンの「色覚補正レンズ」にも似たようなことが言えるからです。「今まで悩みの種だった色覚特性がこれで楽になればいいな」。このせりふの中の「色覚特性」を「眼精疲労」に置き換えると、あら不思議。ブルーライトカットのお話になってしまいました。冒頭の通り、ブルーライトカットレンズを使っても意味がない人は結構いらっしゃいます。これは色覚補正レンズにも言えることです。

 ◇役に立たないケースも

 これまで記事で何度も言っている通り、色盲なのに色弱だと勘違いしてしまっている人はかなり多いのが現状です。かく言う私もそうでした。先に結論を言うと、色覚補正レンズは色弱にはそれ相応の効果が出ますが、残念ながら、色盲の場合は改善が見込めません。これからそのお話をひもといていきましょう。まず色覚特性を持っている人とそうでない一般的な人とは何がどう違うのでしょうか。簡単な棒グラフで説明していきましょう。

 一般的な人の色覚神経のバランスはほぼ均等で、各色とも100ずつの感度を持っていると仮定します。その横に弱度の色弱の人を並べてみると、右のグラフのようなイメージです。

 これは色覚特性の中で最も多いケースのⅡ型3色覚です。緑を認識する神経の感度が他の2色より低いため、緑をベースとした色の区別がつきにくくなります。前回、赤と緑の誤差を認識するというお話をしました。赤と緑の誤差を感知しようとしても緑以上に赤を強く感知してしまうため、緑を見ながら「これは赤です」と言ってしまうことになります。

 では私のような「色盲」はどんな状態でしょうか。棒グラフで示すとの左のようになります。

 このコラムの表題通り、色弱・色盲であっても世界は十分にカラフルです。これは色を認識するに当たり、①色相(赤、青、緑などそもそもの色の認識) ②彩度(鮮やかさ。淡いピンクとパッションピンクなど色の強さによる認識) ③明度(白黒に起因する明るさの認識)という三つの条件があり、互いにフォローし合うためです。

 棒グラフで示した通り、私は緑の細胞が存在しない、または機能していないため、①の色相に迷いが出ます。赤の細胞と青の細胞の二つのみが同等に働くと、②の彩度が落ちるにつれて青なのか赤なのかの認識が難しくなり、薄い色ほど苦手になります。薄いピンク、薄紫、淡い水色が苦手なのはそのためです。私のように色相が苦手な人は彩度も苦手になりがちです。①と②の両方が分からないと、いよいよ明るさのみで判断しなければなりません。黒、濃いこげ茶、濃いグレーという3色のプラスチック製眼鏡を掛け比べても、私にははっきりした明度の違いがないので、どの眼鏡なのかがほぼ分からなくなります。さらに、老眼が始まると物を見るのに必要な光を集めることも苦手になりますから、③の明度も怪しくなってきます。大ピンチです。

 ◇サングラスの色合い

 では、実際に色弱の人をレンズで補正していきましょう。先ほど述べましたが、色弱の人は色相のバランスが悪いために色の認識に誤差が生じます。それなら一般の人と同じにしてあげましょう。具体的には青と赤の両方を均等にカットします。パソコン用のブルーライトカットレンズを使った場合に相当します。

 これで赤、緑、青のバランスが取れ、一般の人と同じになりました。「やった。これであなたも一般人!」と思ったらそうでもないのです。一般的なブルーライトカットレンズは青を反射するため、補色関係にある黄色が強くなります。レンズが黄色っぽくなりますから視界も黄色くなります。完全なクリアレンズにはなりません。クリアレンズ、ブルーライトカットレンズ、色覚補正レンズの見え方を比べてみましょう。

 補正レンズはサングラスのような世界です。サングラスを掛けたときに違和感が出るのは、色の変化を脳が認識して異変を感じ取るからです。レイバンのサングラスの人気カラー「G―15」でいうと、視界が全体的に緑色になるので白に近いものほど緑がかって見えます。隣の人は漫画「ドラゴンボール」に出てくるピッコロ大魔王のようです。すべての色の基準が変わってしまいます。

 目に入らないように光をカットすれば単純に暗くなります。色覚特性が強度になるほど補正レンズの見た目はサングラスのようになり、苦手な色の境目がよく分かる代わりに、今まで得意だった色を判断しにくくなるという事態が起こります。あちらを立てればこちらが立たず。使っている人が少ない理由はここにあります。さらに、私のような色盲の人間には使えません。私は緑の感度がゼロなので、赤も青も100%削ったらただの真っ暗です。何も見えません。

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