イヌ、ネコなどにかまれたとき 家庭の医学

 動物咬傷(こうしょう)としては、イヌやネコ、ヒト、クマ、キツネが多く、最近は生存範囲の拡大とともにアライグマ咬傷もふえています。これらの動物には鋭い歯牙(しが)があり、かまれた場合は咬傷部から微生物が侵入し、傷口が化膿したり、高熱が出たりします。また、破傷風(はしょうふう)になる可能性もあるので、すみやかに医療機関を受診しましょう。特にアライグマは、狂犬病、インフルエンザ、日本脳炎レプトスピラ、紅斑熱群リケッチア、サルモネラなどの病原体を媒介します。写真のようにかわいい動物ですが、性格は狂暴であり、うっかり近寄ったりしないようにしましょう。

 狂犬病については、いまも日本、英国、アイルランド、アイスランド、スカンジナビア半島諸国、ハワイ、グアム、フィジー、オーストラリア、ニュージーランドを除く全世界で発生し、毎年推定5万5000人以上の患者が発生しています。狂犬病ウイルスはイヌ、ネコ、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ジャッカルなどの野生動物に感染し、これらの感染動物からヒトに感染し狂犬病が発病する場合があります。
 狂犬病は、いったん発病すると有効な治療法がなく、ほぼ100%死亡する恐ろしい感染症です。対策は、輸入動物の検疫強化と、狂犬病発生地域へ旅行する場合は、狂犬病ワクチンの曝露前接種と現地で動物にかまれないよう十分に注意することが大切です。万が一、狂犬病が疑われる動物にかまれた場合には、曝露後予防処置をおこなうことで狂犬病発症を防止することができるとされています。

(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)