狂犬病〔きょうけんびょう〕 家庭の医学

 狂犬病ウイルスによる感染症です。狂犬病ウイルスはイヌ、ネコ、オオカミ、コヨーテ、コウモリ、アライグマなどに感染し、これらの動物の唾液に分泌されます。発症した動物は水を見ただけでこわがり、のどが激しくけいれんすることから「恐水病」ともいわれます。
 狂犬病ウイルスに感染した動物にかまれたり、ひっかかれたりすると人にも感染します。潜伏期は1~3カ月で、まれに1年以上に及ぶこともあります。臨床的には咬傷(こうしょう:かまれた傷)周辺の知覚異常、疼痛、不安感、不穏、頭痛、発熱、恐水発作、まひへと進みます。発症すると致命的となる、きわめて致命率の高い感染症です。日本国内では、イヌへのワクチン接種や検疫制度により、1957年以降狂犬病の発生はありませんが、海外で野犬にかまれて感染し、帰国後発症する事例は報告されています。
 確定診断は、唾(だ)液、髄液などからの病原体、病原体遺伝子の検出によりおこないます。
 曝露(ばくろ)前および曝露後のワクチン接種による予防が重要です。開発途上国に長期滞在する場合や、咬傷後すみやかに曝露後ワクチン接種を受けることが困難な地域に滞在する場合は、曝露前ワクチン接種をあらかじめ受けておくことが推奨されます。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
医師を探す

他の病気について調べる