周期性四肢まひ、低カリウム血性ミオパチー〔しゅうきせいししまひ、ていかりうむけっせいみおぱちー〕 家庭の医学

[症状]
 周期性四肢まひは、数時間で四肢の近位筋、すなわちくび、肩、上腕、腰、大腿(だいたい)の脱力を起こす病気です。この際に筋肉はだらっと力を失います。遺伝性に発病するものと、甲状腺機能亢進(こうしん)症(バセドウ病)など、ほかの病気に伴うものがあります。
 さらに、発病時に血液のカリウムが低下する低カリウム血性周期性四肢まひと、血液のカリウムが上昇する高カリウム血性周期性四肢まひとがあります。
 低カリウム血性周期性四肢まひの患者は男性に多く、特に甲状腺機能亢進症に伴うものは男性がほとんどです。脱力は下肢の近位筋から始まります。やがて手、くびにも脱力があらわれますが、目を動かす筋や呼吸する筋はおかされません。重症例では心筋のはたらきがわるくなり、生命の危険も生じます。

[原因]
 四肢まひの発作を誘発する原因として、特に炭水化物の食べすぎ、寒さにさらされること、疲労があげられます。カリウムを低下させる原因として、漢方薬の甘草(かんぞう)などののみすぎがしばしばみられます。
 遺伝性のものは常染色体優性遺伝で、病原遺伝子は第1染色体にあります。血液はカリウムがいちじるしく低下していることが特徴です。
 高カリウム血性周期性四肢まひの多くは遺伝が原因とされています。発作の誘因は、激しい運動のあとに急に休むことや、寒さにさらされることです。
 発作は日中に多く、また顔面の筋や舌の筋がこわばるミオトニー(筋強直)の現象がみられます。遺伝は常染色体優性遺伝で、病原遺伝子は第17染色体にあります。
 日本人を含め東洋人には、バセドウ病に伴う低カリウム血性周期性四肢まひの人がとても多くいます。周期性四肢まひでは、まず脈拍数を調べなければなりません。バセドウ病であれば、多くは脈が毎分100以上にふえています。その他の症状としては、目がギラギラとし、時には目が飛び出してくることもあります(眼球突出)。手の指にはこまかいふるえがみられます。
 食事をきちんとしているにもかかわらず、体重が減り、汗をやたらにかきます。握った手を開かせると、汗が光って見えるほどです。血液では総コレステロールが低下するほか、甲状腺ホルモンが増加していることで診断がつきます。クレアチンキナーゼは正常です。

[治療]
 バセドウ病に伴う場合は、バセドウ病を治療します。抗甲状腺薬の内服によって治療が進むと、もはや周期性四肢まひを再発することはありません。遺伝性の場合にはカリウムを補ったり、抑制する治療をおこないます。

■低カリウム性ミオパチー
 いっぽうで、血液のカリウムがだんだん低下するにつれて、ゆっくりと全身、特にくびや手足の脱力が起こる病気があります。2~3週間の経過でゆっくりと悪化していくことが、周期性四肢まひとは異なります。この病気が低カリウム性ミオパチーで、ひどくなると、くびが支えられず、垂れ下がってしまいます。
 血液検査ではカリウムが低いほか、クレアチンキナーゼが高値となります。
 原因の多くは、肝臓の薬、特にグリチロン(グリチルリチン)と降圧利尿薬ののみ合わせ、漢方薬の甘草または甘草の配合品ののみすぎです。副腎の病気(原発性アルドステロン症)から起こることもあり、入院して精密検査が必要になります。
 治療はまずカリウムを点滴で補います。これにより1~2週間で急速に症状が改善します。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)