ミトコンドリア脳筋症(ミトコンドリア病)〔みとこんどりあのうきんしょう〕

[症状]
 ミトコンドリアは細胞の中にあって、細胞の代謝に重要なはたらきをしています。ミトコンドリアに先天的な異常があって生じる疾患がミトコンドリア脳筋症です。特に脳と筋肉に重大な病気があらわれます。ミトコンドリア脳筋症にはいろいろな病型があり、生下時から発症して致命的なものから、ごく軽度の筋力低下だけのものまでさまざまで、よくみるものだけでも10種を超えます。
 脳の症状の多くはけいれん発作、小脳失調症状、認知症です。筋肉の症状としては眼瞼下垂(がんけんかすい)、眼球運動障害、筋力低下、筋肉の萎縮や、運動をしすぎたときの筋肉痛、赤色尿です。そのほか、眼底の網膜の色素異常(網膜色素変性症)、心筋の障害による不整脈などがあります。
 脳の病型を大きく分けると、5つに分けられます。
 1.小児の重症の乳酸アシドーシスにおいて、脳室の拡大、小脳症、脳梁(のうりょう)無形成を伴うもの。
 2.両側の対称的な大脳基底核、視床、脳幹、小脳に障害を起こすリー脳症。
 3.多巣性の脳障害を生じて、特に後頭葉に脳梗塞様の障害を起こすMELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes:ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)。
 4.大脳白質に海綿状の脳症を起こすカーンズ・セイヤ症候群(20歳以前に発症、進行性外眼筋まひ、網膜色素変性症を伴う)。
 5.大脳基底核の石灰化を示すもの。

[診断]
 検査は、血液と髄液で乳酸やピルビン酸がふえており、筋肉の特徴的な変化とミトコンドリアDNAの分析で診断できます。ミトコンドリアのDNAはくわしく分析されており、その障害部位によって、低身長、筋症、呼吸不全、脳症、脳筋症、不随意運動、貧血、心筋障害、ミオグロビン尿症、聾(ろう)、運動失調、外眼筋まひ、視神経萎縮、糖尿病などが起こることがわかっています。運動しすぎると筋肉痛とともに尿が赤くなり、血液のクレアチンキナーゼが高値になり、ミオグロビンが検出されることがあります。

[治療]
 治療は、ミトコンドリアの補酵素であるコエンザイムQ、ビタミンB1、B2の大量投与が有効なことがあります。過度の運動は避けるべきです。ミトコンドリア病は国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)になっています。