老人性難聴〔ろうじんせいなんちょう〕 家庭の医学

 65歳以上になると誰でも聴力が低下しますが、その程度はさまざまです。

 聴力の悪化は内耳の障害により生じますが、より中枢の神経線維も徐々に障害されるため、ことばの聞き取りが、特に騒々しいところで悪化します。また、音がどこからくるか(方向感)わかりにくくなり、早口のことばの聞き取りも悪化します。最近の研究では、難聴のある人ほど認知症になりやすい傾向にあり、うつなども生じやすいといわれています。
 難聴には補聴器を上手に使うことが重要です。補聴器は耳穴式、耳掛け型、箱型がありますが、難聴の程度や聴力型などに合わせて選びます。老眼鏡を適当に購入しないのと同じように、補聴器も個人個人に合わせたものが必要です。親切心から他人が購入してもうまく使用できません。補聴器を個人に合わせて調整するには熟練を要しますので、耳鼻咽喉科のなかでも補聴器相談医の資格をもつ医師を受診し、認定補聴器専門店を紹介してもらって補聴器を作製することが重要です。また、今まで聞こえていなかった小さな雑音なども聞こえるようになるため、その中から聞きたいことばや音を上手に聞き取れるようになるには脳の訓練が必要であり、おおむね3カ月ほどかかります。難聴が高度なほど聞き取りの訓練は大変で時間がかかるため、聞き取りに不自由を感じたら早めに補聴器を装用することがすすめられています。
 補聴器を上手に使いこなせるとよく聞き取れるようになります。補聴器装用が認知症予防に有効であることが知られており、日常での積極的な補聴器の利用がすすめられます。

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