老人性難聴〔ろうじんせいなんちょう〕 家庭の医学

 65歳以上になると誰でも聴力が低下しますが、その程度はさまざまです。

 聴力の悪化は内耳の障害により生じますが、より中枢の神経線維も徐々に障害されるため、ことばの聞き取りが、特に騒々しいところで悪化します。また、音がどこからくるか(方向感)わかりにくくなり、早口のことばの聞き取りも悪化します。最近の研究では、難聴のある人ほど認知症になりやすい傾向にあり、うつなども生じやすいといわれています。
 難聴には補聴器をじょうずに使うことが重要です。補聴器は耳穴式、耳掛け型、箱型がありますが、難聴の程度や聴力型などに合わせて選びます。老眼鏡を適当に購入しないのと同じように、補聴器も個人個人に合わせたものが必要です。親切心から他人が購入してもうまく使用できません。補聴器を個人に合わせて調整するには熟練を要しますので、耳鼻咽喉科のなかでも補聴器相談医の資格をもつ医師を受診し、認定補聴器専門店で作製してもらうことが重要です。
 補聴器を使うとよく聞き取れるようになり、認知症予防にも有効ですので、日常での積極的な補聴器の利用がすすめられます。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔耳鼻咽喉科・頭頸部外科〕 山岨 達也
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