歯の症状 家庭の医学

■歯の痛み
□刺激痛
 冷たい水や熱い湯、風に触れたとき、あるいは甘い物を食べたときのしみる痛みです。
 う蝕(むし歯)や歯がすり減ったり、ひび割れたりしたとき、あるいは歯周病(いわゆる歯槽膿漏〈しそうのうろう〉)で歯肉が下がり歯根が露出したときに起こります。初期には痛みがすぐにおさまりますが、進行すると痛みが長く続くようになります。歯科が使うう蝕の進行度(C1~C4)からいうとC1からC2の段階で、歯髄(しずい:いわゆる神経)が充血した状態(歯髄充血)になりますが、可逆的な状態です。

□自発痛
 自然にズキズキ痛む拍動性の激しい痛みです。
 う蝕が歯髄にまで達して歯髄炎になったときに起こります。歯科が使うう蝕の進行度からいうとC2からC3の段階で、進行して歯髄がくさってしまうと一時的におさまりますが、う蝕はどんどん進行しますので、やがてかむときに痛みが出ます。さらに進行するとふたたび自発痛が出ます。
 う蝕が目で見えれば原因が簡単にわかりますが、時にははっきりとしたう蝕がないのに自発痛が出ることがあります。そのなかにはう蝕が見つかりにくい場合と、う蝕以外の原因による場合があります。見つかりにくいう蝕には、歯と歯の間や半分歯肉の中に埋まっている歯にできたもの、あるいは一度治療した歯につめたり、かぶせたりしたものの下にできたものなどがあります。
 う蝕以外の原因としては、歯周病が進行して歯根の先端に達した場合、けがをして歯根の先端が傷ついた場合、歯の破折や骨の中の病気や上顎洞(じょうがくどう)の病気が歯根の先端に達した場合などがあります。

□咀嚼痛・咬合痛
 歯をかみ合わせたとき、あるいは、なにかものをかんだときの痛みです。
 歯根膜(歯根と歯槽骨を結ぶ膜)炎のときに起こります。歯科が使うう蝕の進行度からいうとC3からC4の段階で、歯髄がくさって歯根の先端から骨の中にまで進行したときや、歯周病が進行して歯の周囲に炎症が起こったときに症状が出ます。放置しておくと、歯根の外へひろがり、骨髄炎や骨膜炎を起こしてはれてきます(顎骨骨髄炎、顎骨骨膜炎)。
 外傷などで歯根膜が傷ついたときや、歯のまわりの骨の病気が歯根膜に及んだときにも咀嚼(そしゃく)痛が出ます。

■歯の動揺(ゆるみ・ゆれ)
 歯の咀嚼痛とともに歯がゆれ動くのは、歯根膜炎か歯周病で歯の周囲に炎症が起こったときです。急性炎症がおさまり、歯根膜の浮腫(ふしゅ)が改善されれば歯のゆるみはなくなりますが、歯周病のような慢性炎症や腫瘍などによって、歯のまわりの骨がなくなったときにはそのゆれは大きくなります。

【参照】歯と口とあごの病気:う蝕

(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)