眼窩壁骨折〔がんかへきこっせつ〕 家庭の医学

 眼球が入っているへこんだ部分を眼窩といい、この中には眼球のほかに、眼球を動かす筋肉(外眼筋)や脂肪が含まれています。
 眼窩の骨はたいへん薄いため、殴打やボールなどによる打撲を眼瞼に受けた場合に骨折が起こります。眼窩の下側または内側に起こることがほとんどです。吹き抜け骨折とも呼ばれています。

【症状】
 骨折によって外眼筋の動きがわるくなるため、眼球運動が障害されます。すると、両眼で同時に物を見ることができないため、二重に見える症状(複視〈ふくし〉)が起こります。外眼筋が骨折部にはさまってしまうと、複視と同時に強い吐き気や嘔吐(おうと)を起こすことがあります。この状態を放置すると、はさまれた外眼筋の機能が損傷されるため、できるだけ早く手術をおこなう必要があります。
 また、眼窩内の脂肪が骨折部を通って周囲へ落ち込むと、眼球がへこんだような変形が残ります。


【治療】
 骨折の程度が軽く、複視などの症状がない場合は治療を必要としません。骨折部が大きい場合や、症状がある場合は手術をおこないます。一般的には、骨折部を自家骨(自分の骨)の移植によって再建しますが、近年では吸収性プレートを用いた再建がおこなわれることもあります。

【参照】
 目の病気:眼窩吹き抜け骨折
 鼻の病気:眼窩吹き抜け骨折

(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)
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