脊柱靱帯骨化症〔せきちゅうじんたいこつかしょう〕
脊柱靱帯が骨化する疾患で、中高年にみられます。
脊椎の靱帯には椎体や椎間板の前にある前縦靱帯と、それらのうしろにある後縦靱帯、椎弓間にある黄色靱帯があります。後縦靱帯と黄色靱帯の骨化は、脊髄神経を圧迫することがあります。ほかの靱帯骨化の合併も多くみられます。
原因は不明ですが、肥満や糖尿病など糖代謝異常との関係が指摘されています。靱帯にかかる力学的負荷の関与や、兄弟(姉妹)など近親者の発現頻度が高いことから遺伝的背景も考えられています。
■後縦靱帯骨化症
[症状]
頸椎(けいつい)によく発症し、多くは項・頸部の痛み、上肢のしびれや痛みで発症します。進行すると下肢のしびれ、手足の感覚がにぶい、力が入りにくい、手の動きがぎこちない、歩行困難、排尿遅延などの症状も出現します。
胸椎の場合、下肢のしびれ、脱力感、腰背痛、下肢痛などがみられ、進行すると歩行障害などがあきらかになります。国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)の一つとなっています。
[診断]
単純X線側面像で椎体後縁にみとめられます。
横断面での判定にはCT(コンピュータ断層撮影)検査が、脊髄の圧迫状態を見るにはMRI(磁気共鳴画像法)検査が有用です。これら画像の所見と、診察での神経の所見で診断します。
[治療]
無症状のことも少なくなく、すべてが悪化するわけではありません。軽微な頸部外傷で発症したり、悪化することがあります。頸椎の安静のため頸椎固定装具などの保存治療もおこなわれますが、効果は症例によります。痛みに対しては、消炎鎮痛薬を中心とした薬物療法がおこなわれます。脊髄障害が進行性の場合、またはすでにあきらかな場合、悪化の危険が高いと判断される場合などでは、脊髄神経の除圧手術や固定術が考慮されます。
罹病(りびょう)期間の長い例や、重症例は成績が十分ではありません。むずかしい手術になることも多いので、期待されるプラス面とリスクを考え、判断する必要があります。
■黄色靱帯骨化症
黄色靱帯が骨化する疾患です。X線側面像では骨化は椎弓間にみられます。胸椎によく起こります。CT(コンピュータ断層)検査は骨化巣の横断面での把握に有用です。
症状は下肢のしびれ、歩行障害が多く、背部痛、胸部の絞扼感(こうやくかん)、下肢の疼痛(とうつう)、脱力、膀胱(ぼうこう)障害などもみられます。
痛みに対しては、薬物療法や安静・固定を目的とした保存療法が中心となります。まひのある例では手術治療がおこなわれます。まひが進行してしまうと手術による改善が不十分となりますので、比較的早期の手術がすすめられます。
脊椎の靱帯には椎体や椎間板の前にある前縦靱帯と、それらのうしろにある後縦靱帯、椎弓間にある黄色靱帯があります。後縦靱帯と黄色靱帯の骨化は、脊髄神経を圧迫することがあります。ほかの靱帯骨化の合併も多くみられます。
原因は不明ですが、肥満や糖尿病など糖代謝異常との関係が指摘されています。靱帯にかかる力学的負荷の関与や、兄弟(姉妹)など近親者の発現頻度が高いことから遺伝的背景も考えられています。
■後縦靱帯骨化症
[症状]
頸椎(けいつい)によく発症し、多くは項・頸部の痛み、上肢のしびれや痛みで発症します。進行すると下肢のしびれ、手足の感覚がにぶい、力が入りにくい、手の動きがぎこちない、歩行困難、排尿遅延などの症状も出現します。
胸椎の場合、下肢のしびれ、脱力感、腰背痛、下肢痛などがみられ、進行すると歩行障害などがあきらかになります。国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)の一つとなっています。
[診断]
単純X線側面像で椎体後縁にみとめられます。
横断面での判定にはCT(コンピュータ断層撮影)検査が、脊髄の圧迫状態を見るにはMRI(磁気共鳴画像法)検査が有用です。これら画像の所見と、診察での神経の所見で診断します。
[治療]
無症状のことも少なくなく、すべてが悪化するわけではありません。軽微な頸部外傷で発症したり、悪化することがあります。頸椎の安静のため頸椎固定装具などの保存治療もおこなわれますが、効果は症例によります。痛みに対しては、消炎鎮痛薬を中心とした薬物療法がおこなわれます。脊髄障害が進行性の場合、またはすでにあきらかな場合、悪化の危険が高いと判断される場合などでは、脊髄神経の除圧手術や固定術が考慮されます。
罹病(りびょう)期間の長い例や、重症例は成績が十分ではありません。むずかしい手術になることも多いので、期待されるプラス面とリスクを考え、判断する必要があります。
■黄色靱帯骨化症
黄色靱帯が骨化する疾患です。X線側面像では骨化は椎弓間にみられます。胸椎によく起こります。CT(コンピュータ断層)検査は骨化巣の横断面での把握に有用です。
症状は下肢のしびれ、歩行障害が多く、背部痛、胸部の絞扼感(こうやくかん)、下肢の疼痛(とうつう)、脱力、膀胱(ぼうこう)障害などもみられます。
痛みに対しては、薬物療法や安静・固定を目的とした保存療法が中心となります。まひのある例では手術治療がおこなわれます。まひが進行してしまうと手術による改善が不十分となりますので、比較的早期の手術がすすめられます。
(執筆・監修:日本赤十字社医療センター脊椎整形外科 顧問 久野木 順一)