足関節靱帯損傷(捻挫)〔そくかんせつじんたいそんしょう(ねんざ)〕 家庭の医学

 足関節の捻挫は日常よく経験する外傷で、階段や段差などで足くびを強くひねった場合に起こります。捻挫では関節を構成する骨の間をつなぐヒモ状の組織である靭帯が損傷されます。足関節の捻挫でもっとも多いのは、足関節を強く内返し(内反)したために外くるぶし付近の靱帯を傷めるタイプ(足関節外側靱帯損傷)で、足関節部の捻挫の8割以上がこのタイプです。外くるぶしの周囲には3本のおもな靱帯がありますが、内反捻挫でもっとも傷めやすいのは、外くるぶし前部から前方斜め下方に向かう前距腓(ぜんきょひ)靱帯です。

 足関節を強くひねったあとで強い痛みが生じた場合には、まず捻挫を疑います。足関節は骨折の起こりやすい場所でもありますが、痛みのある場所をていねいに探れば、たいていの場合、靱帯の損傷と骨折を区別することが可能です。ただし、捻挫と症状がよく似た骨折もあるので、痛みやはれが強い場合は早めに専門医の診察を受けてください。
 足関節の捻挫をくり返した場合など、足関節が慢性的に不安定な(ゆるい)状態となることがあります。このような状態になると足関節の関節軟骨が徐々に傷ついて、長期的に足関節の痛みや動きの制限が生じる可能性があります。このため、このような場合には手術をおこなって靱帯を再建することがあります。

[治療]
 けがをした直後は足関節を動かないように固定し、患部を冷やすとともに圧迫を加えてはれがなるべく起こらないようにします。患部を心臓より高い位置に保っておけば、はれを予防するうえでさらに効果的です。

(執筆・監修:東京大学大学院総合文化研究科 教授〔広域科学専攻生命環境科学系〕 福井 尚志)
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