熱傷(やけど)〔ねっしょう〕 家庭の医学

 いわゆる“やけど”です。やけどは皮膚に高温が作用して起こりますが、温度が高く、全身に及ぶと死亡することもまれではありません。浅いやけどではきれいに治ってあとを残しませんが、深いやけどでは瘢痕(はんこん:ひきつれ)やケロイドになることがあります。
 やけどの浅い、深い、つまり皮膚の重症度は、温度とその接触時間で決まります。高温でも瞬間的接触であれば、意外に浅くてすみますが、湯たんぽのように低温でも長い時間接触しているときには、深いやけどになってしまいます。

[原因]
 やけどを起こす原因は数多くあります。そのなかではやはり、家庭で熱湯をかけたり、みそ汁、コーヒーやお茶をこぼしたりといったものが多いようです。天ぷら油を浴びたり、沸かしすぎの風呂に落ちる事故もあります。また、ストーブやアイロンなどに接触することもよくあります。花火をしているときの事故もあります。
 重症(広い範囲に深いやけど)になることが多いのは、火災によるものです。

[症状]
 やけど自体の重症度は、その深さと面積で決まります。手のひらの面積がからだの表面全体の約1%に相当するので、それを目安に面積を出すことができます。また、9の法則といって、からだの各部分が9%相当の面積を占めることを利用した方法(顔・頭が9%、胴体の前と後がそれぞれ18%、左右上肢がそれぞれ9%、左右下肢がそれぞれ18%)もあります。この方法は大人用で、乳幼児では頭、顔の面積が大きいので補正が必要です。
 深さはⅠ~Ⅲ度に分けられます。
 Ⅰ度…表皮のやけどで、皮膚が赤くなり(紅斑〈こうはん〉)、軽いむくみ(浮腫)が出て、ひりひりとした痛みがあります。
 Ⅱ度…表皮の下の真皮にまで及んだやけどで、赤くなって水疱(すいほう)ができます。神経が刺激されて痛みの強いのが一般的です。Ⅱ度熱傷は、さらに浅層熱傷と深層熱傷に分けられます。浅層熱傷は水疱の下が赤くなっていますが、深層熱傷では白くなっています。深層熱傷になると、傷の治りがおそく、治ってもあとが残ってしまうことが多いのです。
 Ⅲ度…やけどによる皮膚傷害が皮下脂肪まで及んだものです。真皮の血管や神経もこわれてしまいますので、皮膚は白色、黄白色となり、痛みも感じなくなります。しばらくすると、壊死(えし)におちいった組織がとれて潰瘍ができます。なかなか治りにくく、治ってもあとが残ります。

[治療]
 やけどの重症度、深さと面積で治療法が異なりますが、部分的なやけどの応急処置としては、まず冷やすことです。水道水のような流水で30分から1時間くらい冷やしてから、病院を受診してください。部分的なやけどでは感染を防ぐため、消毒、抗生物質の軟膏(なんこう)塗布、さらには内服をして経過をみます。
 浅いやけどでは、数日から2週間以内にあとを残さず治ります。深いやけどでは2~3週間しても治りません。感染防止や壊死組織を除く治療を続けるか、場合によっては植皮手術をすることもあります。
 Ⅱ度熱傷で体表面積の15%以上、30%以上を占めるときは、それぞれ中等症、重症、Ⅲ度では2%以上、10%以上をそれぞれ中等症、重症とします。入院などのきちんとした治療が必要となります。特にⅢ度の広範囲重症熱傷は生命の危険性も大きいので、ただちに救急車で熱傷治療設備のある大学病院などに運ぶ必要があります。
 また、乳幼児は大人とくらべて、熱傷面積が広くなくても、感染を起こしやすく、全身状態がわるくなりがちですので、早めに病院を受診してください。

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