腹部外傷〔ふくぶがいしょう〕 家庭の医学

 交通事故で腹部を強く打つと内臓損傷が起こります。シートベルトは適正な位置にしていないとベルトで圧迫され内臓損傷が起こります。歩行者も自動車に当てられたり、飛ばされたりして腹部を打つと同じことになります。おもに肝臓や脾(ひ)臓、腸の破裂を起こします。大きな破裂では、腹腔(ふくくう)内に多量に出血しショック状態や腹膜炎を起こし重症となり、急死することもあります。
 歩行者が背部から自動車に強く当てられると、腎臓の破裂を起こすことがあります。このとき、血尿や無尿になります。また、腰椎(腰の骨)の骨折を起こすこともあります。
 破裂が小さいと徐々に出血して、全身状態がすこしずつわるくなります。はじめは状態がよくても徐々に悪化することがあります。腹部外傷ではこの遅れて症状が出ることがある点に注意が必要です。
 下腹部を強く打った場合やはさまれた場合、高い所から落ちた場合は、骨盤骨折を起こします。骨盤骨折は多量の出血を起こし、ショック状態となることがあります。また、膀胱(ぼうこう)や尿道などの損傷を起こすこともあります。
 腹部外傷では緊急手術ができる病院に運ぶ必要があります。すぐに手術しなくても、万が一のことを考え手術をおこなえる用意が必要です。

【参照】応急手当て:胸・背―腰・腹のけが

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)
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