家庭での介護の考えかた 家庭の医学

■介護はプロに依頼し、家族は家族でなければできないことをする
 家族のなかに事故や病気のために自宅での介護を必要とする療養者がいるとき、生活の援助をおこなうのは多くの場合、家族です。しかし、家族すなわち介護をする人と決めつけないでください。
 もちろん家族が介護をすることができれば、それに越したことはありません。しかし、家族には家族の生活があります。また介護に不慣れな家族もいます。いまは介護保険制度により、地域差はありつつも介護サービスが充実してきました。もし要介護・要支援の認定がとれているならば、介護は専門職に依頼して、家族は療養者の精神的な支えとなり、家族でなければできないことをするという考えかたが必要です。

■療養者のセルフケア能力を最大限に生かす
 自宅での介護が必要となる状況には、慢性疾患や骨折などで入院し病状が安定し退院しても引き続き療養や手助けが必要な場合、医療機器をつけたまま退院し自宅で医療的処置が必要な場合、家族とともに過ごしながら自宅で最期(さいご)を迎えたいという希望がある場合などがあります。
 療養者の多くは入院治療を経て、自宅での療養生活を始めています。自宅での療養生活は病気やけがをする前にくらべて、病状管理の必要性がふえただけでなく日常生活を送るうえでの不便を感じることが多く、いままであたり前のようにしていたことに時間がかかったり、できなくなったりして精神的につらい思いをするのではないでしょうか。それだけに療養者は身体面だけでなく、精神面においても毎日多くの支援を必要としています。
 介護の原則は、家族が療養者の望むことをなにからなにまでしてあげることではなく、またこちらから押しつけることでもなく、療養者のもっている身体的・心理的・社会的能力を最大限に生かせるように支援することです。そして療養者が家族の一員として、また社会の一員として生きている喜びを家族とともに分かちあっていくことでしょう。

■療養者と家族両者のQOL(quality of life:生活の質)の維持・向上を目指す
 療養者を介護する家族にとって、はじめておこなう介護は家事や仕事に加えていままでにない経験であり、心身への負担も避けることはできません。療養者の生活が落ち着いても、家族が介護疲れで病気になることもあります。療養者と介護をする家族がともによりよい状況での生活を送っていきたいものです。療養者のみの尊厳を守るのではなく、家族の尊厳もともに守ることが大切です。
 ここでは、介護を特に必要とする療養者、つまり1日のほとんどをベッド上で送っていたり、介助なしで動くのがむずかしい療養者への生活の援助について述べます。

(執筆・監修:東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 看護科学域 准教授 竹森 志穂)