原発性免疫不全症候群〔げんぱつせいめんえきふぜんしょうこうぐん〕

[原因]
 人の体内に侵入する細菌やウイルスなどの病原体を制圧する免疫システムのどこかに先天的な欠陥があり、重症な感染症にくり返し罹患(りかん)してしまう病気です。免疫システムの複雑さから、原発性免疫不全症候群に含まれる疾患は数多くあり、疾患ごとに症状や治療も異なっています。リンパ球のB細胞機能が障害されると抗体産生ができなくなり、T細胞機能が障害されるとウイルス感染細胞を破壊できなくなったりします。

[症状]
 抗体産生不全では、母親からの抗体が消失する生後6~9カ月以降に中耳炎副鼻腔(くう)炎肺炎をくり返したり、髄膜炎敗血症などの重症細菌感染症になったりします。T細胞不全では病原性の弱いウイルスや真菌などの感染が起こってきます。B細胞、T細胞両方の機能不全である複合免疫不全ではニューモシスチス・カリニ、カンジダ、サイトメガロウイルスなどの感染が起こりやすく、しかも重症化します。

[治療]
 それぞれの感染症の治療をおこないます。特異的な治療法として抗体産生不全では免疫グロブリン補充療法が、複合免疫不全では骨髄移植がおこなわれます。

[感染予防]
 感染症が重症化するため、その予防が必要です。うがいや歯みがきを励行し、人混みではマスクを着用します。患児家族はワクチン接種を行い、患児への感染を防ぎます。医師から指示された予防薬はきちんと内服します。なお、この病気は国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)の一つです。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
医師を探す

関連ニュース