目のおもな症状と病気
目は私たちが物を見て、かたちや色、遠近などを知るための器官であり、目を通じて私たちは多くの情報を得ています。目に病気が起こって見えなくなると、私たちの日常生活はたいへん不便・不自由になります。たとえば、両眼を閉じて近くの駅まで歩きなさいといわれて、そのとおりに行動しようとするといかに不便かわかると思います。
目はからだ全体からみれば、とても小さな器官ですが、おこなっている仕事は質、量ともにたいへんなものです。この大切なはたらきをしている目をいつまでも健康に保つためには、目のいろいろなことを知っておくことが大切です。特に目のいちばん重要なはたらきである視力を障害する病気については、よく知っておく必要があります。誤った知識や無知はとりかえしのつかない障害を目に与えることがよくあります。
目の病気のなかには、その初期に気づいていれば、障害を残さないで治るものが多くあります。40歳を過ぎたら年に一度の定期検診が必要です。また日ごろから気をつけていて、これはおかしいと気づいたら、できるだけ早く、眼科専門医に相談することが大切です。
いろいろな目の症状によって、目ばかりでなくからだ全体のさまざまな病気の診断がつく場合がありますから、注意深く自分の症状を観察してください。
目はまぶたの上から触れてみてわかるように一定のかたさがあります。これを眼圧といいますが、眼圧の異常によって緑内障をはじめとする重大な疾患が起こります。眼圧測定は一般成人健診の際におこなう必要があります。
眼底検査は眼科独特の検査です。眼底血管は頭蓋内血管の枝でもあり、生体のなかで動脈・静脈を直接観察できる唯一の場所です。頭の内部だけでなく全身の血管の状態を反映する大切な検査で、生活習慣病健診では必ずおこなうべきものです。また、眼底検査では視神経乳頭の観察が大切で、緑内障をごく初期に発見し、治療を早期にはじめることで視機能を終生保つことができます。
■急に見えなくなる病気
目でもっとも困る症状は、視力障害です。急に見えなくなったといっても、きのうはなんでもなかったのにけさ起きたら視力がわるいことに気づいたとか(ぶどう膜炎、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、糖尿病網膜症)、中心だけが見にくく周囲はよい(視神経炎、中心性漿液性脈絡〈みゃくらく〉網膜症、加齢黄斑変性、黄斑上膜〈黄斑前膜〉)、上あるいは下から黒い雲が湧いてくるように視野が欠けて見えなくなる(網膜剥離〈はくり〉)などと、見えなくなった場所や、その起こりかたから、病名がわかることが多くあります。
光が目に入る光路をさまたげたり、光を知覚する網膜や視神経に病変が起こったときに、急激な視力低下がきます。
例をあげると、角膜では匐行(ふくこう)性角膜潰瘍、角膜裂傷、角膜ヘルペスなど、前眼部では緑内障発作、急性虹彩毛様体炎(ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病など)、硝子体(しょうしたい)では硝子体出血、硝子体混濁、網膜では網膜出血(加齢黄斑変性、黄斑上膜、網膜中心静脈閉塞症、高血圧性眼底、糖尿病網膜症、網膜中心動脈閉塞症、網膜剥離、ベーチェット病、トキソプラズマ症、サルコイドーシス、原田病、中心性漿液性脈絡網膜症、急性網膜色素変性症)、脈絡膜出血、乳頭炎、視神経炎、球後視神経炎、視神経管骨折、頭蓋内出血やヒステリーなどがあります。
■徐々に見えなくなる病気
角膜は目に光が入る最初のところで、光を屈折して網膜に焦点を結ぶレンズの役割をしている大切な組織です。光を目に入れる場所ですから透明でなければなりません。透明性をそこなうと視力が障害されることになります。
角膜のうしろの前(眼)房、水晶体、硝子体、網膜も透明でなければなりません。これらの組織の透明性をそこなう疾患として、角膜では角膜ヘルペス、角膜変性症、水疱(すいほう)性角膜症、前眼部では閉塞隅角(ぐうかく)緑内障、水晶体の濁りである白内障、硝子体混濁、網膜では網膜色素変性症、黄斑上膜、加齢黄斑変性、脈絡膜萎縮、視神経萎縮、近視、遠視、乱視、老視、脈絡膜黒色腫などがあります。
■目が痛む病気
目が痛むといってもさまざまな場合があります。ゴロゴロと何か目に入ったように感じる(結膜・角膜異物、結膜炎、角膜炎、角膜潰瘍など)、目の表面の病気の場合と、ズキンと目の奥まで痛み、特に光が入ると痛みが増してくるような場合(虹彩毛様体炎、角膜ぶどう膜炎、上強膜炎・強膜炎など)や、強い光を長時間見たあとにしみるような痛み(電気性眼炎など)や、長時間近くの物を見る仕事のあとに、目の奥が痛む(老視、遠視、乱視、眼精疲労など)など、痛みの種類や場所などによって、病気の診断がつくことがあります。
目に強い炎症や外力が加わった場合、特に前眼部で痛みを感じます。
眼瞼(がんけん:まぶた)では麦粒腫(ばくりゅうしゅ)(外麦粒腫、内麦粒腫)、急性霰粒腫(さんりゅうしゅ)、急性涙嚢(るいのう)炎、結膜では急性結膜炎、流行性角結膜炎、結膜異物、角膜では角膜異物、角膜びらん、辺縁性角膜潰瘍、角膜ヘルペス、角膜裂傷(れっしょう)、匐行性角膜潰瘍、前眼部では急性虹彩毛様体炎、閉塞隅角緑内障発作、三叉神経痛、帯状疱疹、そのほか眼精疲労、全眼球炎などがあります。
■目が赤くなる病気
目が赤いということは、目の白い部分である結膜や強膜の血管が怒張(どちょう:ふくれあがっていること)して充血したり、出血したりして起こります。このようなことを起こす疾患として種々の結膜炎、結膜異物、角膜炎、角膜外傷、緑内障、虹彩炎、膠原(こうげん)病、結膜下出血、上強膜炎、強膜炎などがあります。
■色の区別がつきにくい病気
色覚異常など先天的なものと、視神経炎、球後視神経炎、加齢黄斑変性、薬物中毒など後天的なものがあります。先天性色覚異常は伴性劣性遺伝形式で遺伝します。
先天性色覚異常者は実生活では大きな問題はなく、大学入試や就職に際し差別のないように規定されています。
■高齢者に多い病気
年をとるにつれて目にも老化現象が起こることはやむをえませんが、そのなかでやはり早期に気づき、きちんと処置すれば、いちじるしい視力障害を起こさずにすむ病気がいくつかあります。
ピカッと光ったり、糸くずや虫が飛ぶように見える飛蚊(ひぶん)症は、その背後に眼底出血や網膜裂孔(れっこう)形成があり、網膜剥離というやっかいな病気の前兆となることがあります。飛蚊症に気づいたら眼底のすみずみまでよく検査しておく必要があります。
重大な病気になる前にちょっとした検査などで、それを防ぐことができることに注意しましょう。
糖尿病網膜症は、その初期であれば適切な処置で失明を免れることができますから、糖尿病と診断されたら、定期的に(少なくとも1年に1回)、眼底検査を受ける必要があります。正常眼圧緑内障、開放隅角緑内障も知らない間に進行してしまいますから、40歳以上になれば、定期的な眼圧と眼底検査が必要となります。
そのほか、調節力の低下である老視(老眼)、眼瞼の悪性腫瘍、緑内障、白内障、網膜では網膜動脈硬化、高血圧性眼底、網膜中心静脈(分枝)閉塞、網膜中心動脈(分枝)閉塞、網膜中心動脈閉塞、加齢黄斑変性、黄斑上膜、網膜剥離などがあります。
目はからだ全体からみれば、とても小さな器官ですが、おこなっている仕事は質、量ともにたいへんなものです。この大切なはたらきをしている目をいつまでも健康に保つためには、目のいろいろなことを知っておくことが大切です。特に目のいちばん重要なはたらきである視力を障害する病気については、よく知っておく必要があります。誤った知識や無知はとりかえしのつかない障害を目に与えることがよくあります。
目の病気のなかには、その初期に気づいていれば、障害を残さないで治るものが多くあります。40歳を過ぎたら年に一度の定期検診が必要です。また日ごろから気をつけていて、これはおかしいと気づいたら、できるだけ早く、眼科専門医に相談することが大切です。
いろいろな目の症状によって、目ばかりでなくからだ全体のさまざまな病気の診断がつく場合がありますから、注意深く自分の症状を観察してください。
目はまぶたの上から触れてみてわかるように一定のかたさがあります。これを眼圧といいますが、眼圧の異常によって緑内障をはじめとする重大な疾患が起こります。眼圧測定は一般成人健診の際におこなう必要があります。
眼底検査は眼科独特の検査です。眼底血管は頭蓋内血管の枝でもあり、生体のなかで動脈・静脈を直接観察できる唯一の場所です。頭の内部だけでなく全身の血管の状態を反映する大切な検査で、生活習慣病健診では必ずおこなうべきものです。また、眼底検査では視神経乳頭の観察が大切で、緑内障をごく初期に発見し、治療を早期にはじめることで視機能を終生保つことができます。
■急に見えなくなる病気
目でもっとも困る症状は、視力障害です。急に見えなくなったといっても、きのうはなんでもなかったのにけさ起きたら視力がわるいことに気づいたとか(ぶどう膜炎、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、糖尿病網膜症)、中心だけが見にくく周囲はよい(視神経炎、中心性漿液性脈絡〈みゃくらく〉網膜症、加齢黄斑変性、黄斑上膜〈黄斑前膜〉)、上あるいは下から黒い雲が湧いてくるように視野が欠けて見えなくなる(網膜剥離〈はくり〉)などと、見えなくなった場所や、その起こりかたから、病名がわかることが多くあります。
光が目に入る光路をさまたげたり、光を知覚する網膜や視神経に病変が起こったときに、急激な視力低下がきます。
例をあげると、角膜では匐行(ふくこう)性角膜潰瘍、角膜裂傷、角膜ヘルペスなど、前眼部では緑内障発作、急性虹彩毛様体炎(ベーチェット病、サルコイドーシス、フォークト・小柳・原田病など)、硝子体(しょうしたい)では硝子体出血、硝子体混濁、網膜では網膜出血(加齢黄斑変性、黄斑上膜、網膜中心静脈閉塞症、高血圧性眼底、糖尿病網膜症、網膜中心動脈閉塞症、網膜剥離、ベーチェット病、トキソプラズマ症、サルコイドーシス、原田病、中心性漿液性脈絡網膜症、急性網膜色素変性症)、脈絡膜出血、乳頭炎、視神経炎、球後視神経炎、視神経管骨折、頭蓋内出血やヒステリーなどがあります。
■徐々に見えなくなる病気
角膜は目に光が入る最初のところで、光を屈折して網膜に焦点を結ぶレンズの役割をしている大切な組織です。光を目に入れる場所ですから透明でなければなりません。透明性をそこなうと視力が障害されることになります。
角膜のうしろの前(眼)房、水晶体、硝子体、網膜も透明でなければなりません。これらの組織の透明性をそこなう疾患として、角膜では角膜ヘルペス、角膜変性症、水疱(すいほう)性角膜症、前眼部では閉塞隅角(ぐうかく)緑内障、水晶体の濁りである白内障、硝子体混濁、網膜では網膜色素変性症、黄斑上膜、加齢黄斑変性、脈絡膜萎縮、視神経萎縮、近視、遠視、乱視、老視、脈絡膜黒色腫などがあります。
■目が痛む病気
目が痛むといってもさまざまな場合があります。ゴロゴロと何か目に入ったように感じる(結膜・角膜異物、結膜炎、角膜炎、角膜潰瘍など)、目の表面の病気の場合と、ズキンと目の奥まで痛み、特に光が入ると痛みが増してくるような場合(虹彩毛様体炎、角膜ぶどう膜炎、上強膜炎・強膜炎など)や、強い光を長時間見たあとにしみるような痛み(電気性眼炎など)や、長時間近くの物を見る仕事のあとに、目の奥が痛む(老視、遠視、乱視、眼精疲労など)など、痛みの種類や場所などによって、病気の診断がつくことがあります。
目に強い炎症や外力が加わった場合、特に前眼部で痛みを感じます。
眼瞼(がんけん:まぶた)では麦粒腫(ばくりゅうしゅ)(外麦粒腫、内麦粒腫)、急性霰粒腫(さんりゅうしゅ)、急性涙嚢(るいのう)炎、結膜では急性結膜炎、流行性角結膜炎、結膜異物、角膜では角膜異物、角膜びらん、辺縁性角膜潰瘍、角膜ヘルペス、角膜裂傷(れっしょう)、匐行性角膜潰瘍、前眼部では急性虹彩毛様体炎、閉塞隅角緑内障発作、三叉神経痛、帯状疱疹、そのほか眼精疲労、全眼球炎などがあります。
■目が赤くなる病気
目が赤いということは、目の白い部分である結膜や強膜の血管が怒張(どちょう:ふくれあがっていること)して充血したり、出血したりして起こります。このようなことを起こす疾患として種々の結膜炎、結膜異物、角膜炎、角膜外傷、緑内障、虹彩炎、膠原(こうげん)病、結膜下出血、上強膜炎、強膜炎などがあります。
■色の区別がつきにくい病気
色覚異常など先天的なものと、視神経炎、球後視神経炎、加齢黄斑変性、薬物中毒など後天的なものがあります。先天性色覚異常は伴性劣性遺伝形式で遺伝します。
先天性色覚異常者は実生活では大きな問題はなく、大学入試や就職に際し差別のないように規定されています。
■高齢者に多い病気
年をとるにつれて目にも老化現象が起こることはやむをえませんが、そのなかでやはり早期に気づき、きちんと処置すれば、いちじるしい視力障害を起こさずにすむ病気がいくつかあります。
ピカッと光ったり、糸くずや虫が飛ぶように見える飛蚊(ひぶん)症は、その背後に眼底出血や網膜裂孔(れっこう)形成があり、網膜剥離というやっかいな病気の前兆となることがあります。飛蚊症に気づいたら眼底のすみずみまでよく検査しておく必要があります。
重大な病気になる前にちょっとした検査などで、それを防ぐことができることに注意しましょう。
糖尿病網膜症は、その初期であれば適切な処置で失明を免れることができますから、糖尿病と診断されたら、定期的に(少なくとも1年に1回)、眼底検査を受ける必要があります。正常眼圧緑内障、開放隅角緑内障も知らない間に進行してしまいますから、40歳以上になれば、定期的な眼圧と眼底検査が必要となります。
そのほか、調節力の低下である老視(老眼)、眼瞼の悪性腫瘍、緑内障、白内障、網膜では網膜動脈硬化、高血圧性眼底、網膜中心静脈(分枝)閉塞、網膜中心動脈(分枝)閉塞、網膜中心動脈閉塞、加齢黄斑変性、黄斑上膜、網膜剥離などがあります。
(執筆・監修:慶應義塾大学 教授〔眼科〕 根岸 一乃)