錠剤の種類

 一般に内服薬である錠剤はそのまま水と一緒にのみ込むと、食道、胃を通過し、腸に達します。その間に薬の成分が胃で溶けて腸から吸収され、肝臓を通って血管内(血中)に入り、全身に回ることで効果が発揮されます。ただ、小児や高齢者ではのみ込む(嚥下)ことがむずかしい場合もあり、最近ではのみやすくした錠剤が出てきました。さらに病気によっては、口の粘膜から薬を吸収させるようなしくみで効かせる錠剤もあります。

・口腔内崩壊(OD)錠:口の中に入れると唾液により、すみやかに(おおよそ30秒以内で)溶けてしまい、そのままのみ込みます。このためのみ込みやすくなり、のどでつまったり、誤嚥したりするのを防ぎます。水なしでものめますが、普通錠のように水でのみ込んでもいいです。
・チュアブル錠:咀嚼(そしゃく)錠ともいわれ、口の中でかみ砕いてのみ込みます。水なしでのめますが、逆にかみ砕かずにそのままのむと胃腸で溶けずに薬の成分が吸収されないものもあります。
・舌下錠:舌の下に置くことで薬の成分が溶け出し、粘膜下に走っている小血管から吸収されます。薬が口の粘膜を通して直接血中に入るので即効性が期待できます。狭心症に対するニトログリセリンやがんの痛みに対する鎮痛薬で使用されます。
・バッカル錠:臼歯(奥歯)の歯茎と頬の間に置くことで、唾液により薬の成分が溶け出して頬の内側の粘膜から吸収されるしくみになっています。がんの痛みに対する鎮痛薬などで使用され、ゆっくり溶け出し舌下錠と異なり長時間効かせることをねらっています。
・トローチ:口の中で唾液により徐々に薬の成分が溶け出し、口の中やのどの局所に効かせます。ゆっくり溶けるよう硬く加工されています。口内炎やかぜなどによるのどの炎症を抑えたり、殺菌などに使用されます。
・腸溶錠:薬の成分が胃酸により変化したり、胃を荒らしたりするために、胃で溶けにくくして腸に入ってから溶け出す工夫をした錠剤です。ただ、割ったりかみ砕いたりしてのみ込むと、逆に薬の効果がなくなったり、胃がわるくなったりします。

 正しいのみかたで使用しないと効果がなくなる剤型もあります。薬剤師によく説明してもらって、それぞれの注意事項を守って、服薬することが大切です。

(執筆・監修:東京慈恵会医科大学 教授〔臨床薬理学〕 志賀 剛)