抗生物質の副作用

 ペニシリンにはじまる多くの抗生物質(抗菌薬)の開発により、細菌による治りにくかった病気が比較的容易に治るようになり、抵抗力の弱い重病人や高齢者以外は、肺炎や結核などの細菌感染では死ぬことは少なくなりました。最近ではウイルスに有効な抗菌薬も開発されて、ヘルペスやインフルエンザにも使われるようになりました。いっぽうで、それぞれの抗菌薬に抵抗力をもった細菌が出現したり、種類の異なる新型肺炎が出現したりと、病気の性質も変化してきています。わが国では薬剤抵抗性細菌の感染が多くなっているのが問題です。
 また、過敏反応を起こす人やもともとアレルギー体質の人に注射すると、直後に激しいショック症状を呈し、ぜんそくのような呼吸をし、顔色が蒼白(そうはく)となり、血圧が下がって脈が触れなくなり、ひどいときにはそのまま死亡することさえあるのです(ペニシリン・ショック)。しばらくしてから、じんましんが出る程度の軽い場合もあります。
 どんな抗菌薬でも、過敏反応のある人にはショックなどが起こり、その他の一般的副作用として、血液については好酸球増加や骨髄障害による顆粒(かりゅう)球減少、血小板減少、貧血、また、溶血・凝固異常などの変化が起こりやすく、内服したあとの胃腸障害、静脈注射による静脈炎血管痛や肝臓障害、聴力障害や腎臓障害、肺線維症などもあります。
 これらの副作用を防ぐため、あらかじめ注射の前に、使われる抗菌薬に対するアレルギーの有無を皮内反応によって調べてから注射することになっています。なお、経口薬でもまれにショックが起こりますが、むしろ吐き気や下痢のような胃腸症状がおもです。発熱したからといって抗菌薬は安易に使わず、常に厳重な医師の監督が必要です。
 細菌の種類によっては、たとえば、ブドウ球菌、大腸菌、結核菌などは、薬を使っているうちにその薬に耐性となることがあります。そこで別の効く薬や新しい薬に変えねばならないということが起こります。
 また、ある抗菌薬を使っているときは、その抗菌薬の効く菌がいなくなり、効かない別の菌が繁殖してくるという、いわゆる“菌交代”という現象が起こることもあります。この場合、細菌の代わりにカビ(真菌)が繁殖することもあり、カビに有効な薬物が少ないので非常に治りにくく、重症になることがあります。そのほか、抗菌薬の副作用として腸内細菌が減り、その結果、下痢腸炎やこれらの細菌が合成していたビタミン(B群)の欠乏が起こることもあります。
 抗菌薬は多種類の細菌に効く多くの強力な薬がつくられていますが、使いすぎるとかえって薬の効かない細菌の感染症、たとえばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症が起こります。また、抗菌薬で病原性細菌は駆逐されても、そのためにカビが増殖してかえって治療が困難になることもあります。医師に病原菌の種類と患者の体質に合ったものを選んでもらい、必要なだけ慎重に使ってもらい、むだに続けるようなことがないよう注意しなければなりません。