多剤併用(ポリファーマシー) 家庭の医学

 高齢者では複数の病気をもっていることが多く、必然的に薬の数がふえてしまいます。その結果、10種類以上の薬をのんでいる多剤併用(ポリファーマシー)が珍しくありません。薬の効果を期待してのことではありますが、薬の数がふえればふえるだけ薬の害による危険性も高くなります。
 ポリファーマシーには「適切」と「不適切」があります。たとえば心不全の一部では、1種類よりも複数の種類の薬を併用したほうが予後がよいという報告があります。しかし、多くのポリファーマシーは、個々の病気に対応した足し算的な処方による「不適切」な場合が多いのが実態です。
 各病気の専門の医師に複数かかっている場合や薬の副作用を別の薬で抑えようとすると、このようなことが起こってしまいます。現在、多くの薬をのむことによって高齢者の生活能力が落ちてしまうこと(転倒・ふらつき、食欲低下、意欲低下、筋力低下など)が社会問題となっています。むしろ、家庭医やかかりつけ医、かかりつけ薬剤師に相談して、本当に必要な薬のみに整理して極力薬の数を減らしてもらうことが必要です。

(執筆・監修:東京慈恵会医科大学 教授〔臨床薬理学〕 志賀 剛)