副腎皮質ステロイド薬の副作用 家庭の医学

 副腎皮質ステロイドは、アレルギーや膠原(こうげん)病の治療には有用で、関節リウマチのほか、気管支ぜんそく、ネフローゼ、エリテマトーデスなどの膠原病、湿疹などの皮膚病、その他いろいろの病気に広く使われています。しかし、よく効く薬だけに、またいろいろな副作用もあるので、けっして自分で勝手に使ってはなりません。
 副腎皮質ステロイド薬は、元来、副腎皮質ホルモンの一部と同じです。この薬を長期に使っていると、副腎皮質自体を抑制する作用が、からだのなかで起こり、副腎皮質は萎縮してしまいます。もしこんなとき、急に薬をやめると、“急性副腎不全”といってひどいショック症状を起こし、死亡することがあります。
 この薬は元来、炎症を抑える薬ですが、同時に、細菌に対するからだの抵抗力が抑えられて、わからないうちに、重い感染症が進むことがあります。肺結核のおさまっていた状態から、粟粒(ぞくりゅう)結核が出たり、肺や尿路に耐性の細菌がついたりします。このことは副腎皮質ステロイド薬の入った軟膏(なんこう)でも同じで、細菌の感染のある部分にこれをつけると、悪化することがあります。
 そのほか、重い副作用として、精神症状を起こしたり、糖尿病を誘発したり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍をつくったりします。比較的軽い副作用としては、顔がお月様のようにまるくなり、赤いしわが出たりします。使いかたが、むずかしい薬です。
 いずれにしても、薬、特に効果のいちじるしい薬を使う場合には、副作用の可能性を常に考え、すこしでも変化があれば、医師の指示を受けることが必要で、早く気づいて中止すれば、大事に至らないことが多いのです。
 最近では、関節リウマチをはじめ膠原病や自己免疫疾患に対して、副腎皮質ステロイド以外にも新しい機序をもった有効な薬が出てきているので、専門医に相談してください(リウマチ)。

(執筆・監修:東京慈恵会医科大学 教授〔臨床薬理学〕 志賀 剛)