薬の用量

 薬の作用が量に関係することは、前述のとおりですが、特に注意したいのは、余計に使うとさらによく効くという考えが、時に重大な危険を伴うということです。
 ビタミンB1欠乏症(脚気〈かっけ〉)のとき、ビタミンB1薬を1日1mgでは効かず、5mgにしたらすこし効き、10mgにしたら、もっとよく効くということはあります。しかしあまりにも多すぎると、同時に利用されるビタミンB2の不足が生じることもあります。
 また、気管支肺炎で、ペニシリンを1日30万単位ではなく、100万単位にしたらよく効くということもあります。いっぽう、ペニシリンアレルギーの人ではごくわずかの注射でも危険な場合があります。
 しかし、これらの薬を多く使うのは、特に多く使っても支障のない場合であって、どの薬もこんなわけにはいきません。ふつうよく使われるアスピリンでさえ、一度に5gものめば、めまいなどひどい副作用があります。睡眠薬に使うバルビタールは、1回に0.2~0.5g用いるものですが、3g以上のむと危険であり、死に至ることもあるのです。そこで、0.5gが極量(これを超えると中毒を起こす危険性のある量)ということになっています。どの薬にも適当な常用量が決められています。
 薬の量は、おおよそ、体重に比例して使っていいのですが、肝臓や腎臓のわるい人はなかなか排出されず、すこし多く使うと中毒を起こすことがあります。薬によって肝臓から排泄(はいせつ)されるものと腎臓から排泄されるものがあり、このことを知って、それぞれ服用する人の状態に合ったものを使います。強心薬のジギタリスは、肝臓から排泄されたものが腸からふたたび吸収され、結局腎臓から排泄されます。そこで腎臓のわるい人ではなかなか排泄されず中毒を起こしやすくなるのです。
 たとえば、スモンスモンの原因となったキノホルムは、少量を短期間用いると各種の下痢に有効な使いやすい薬でした。大量あるいは長期間用いられるようになって、神経症状を起こし、発売禁止になりました。
 このように薬の量は、体重にあわせて量を決めることが多いのですが、小児では一般に少なめに用い、高齢者でも腎臓のはたらきが弱くなることもあってなるべく少なめの量にします。また、生まれつきの体質(たとえば肝臓で薬を分解する酵素の活性が少ない人など)とか、食事の内容などの環境条件で薬の効果が強くなりやすい場合や、一部人種による差もみとめられています。一般に日本人は欧米人にくらべて体重あたりの薬の使用量は少ないのです。