寄生虫病 家庭の医学

解説
 寄生虫には回虫や日本住血吸虫、日本海裂頭条虫など多細胞生物の蠕虫(ぜんちゅう:いわゆる寄生虫)と、マラリア赤痢アメーバなど単細胞生物の原虫があります。回虫や蟯虫(ぎょうちゅう)のように人にだけ感染する寄生虫と、エキノコックスのように動物と人に共通して感染する寄生虫(人獣共通寄生虫症)があります。
 食生活の多様化によって、ペットや野生動物の寄生虫が人に感染して、幼虫が皮内または皮下を移動してみみずばれやこぶが動いたり、肝、肺、脳、眼の深部組織に移行することも多くみられます(幼虫移行症)。
 国際化によって熱帯・亜熱帯地域への渡航の際に感染して国内に持ち込むマラリアなど、日本ではみられない寄生虫病も多くみられるようになりました。
 高齢化あるいは免疫抑制薬の使用などで抵抗力の低下した人たちに対し、ふつうなら症状がほとんどない寄生虫に感染して重症化し、死にいたるクリプトスポリジウム症などの日和見感染症もみられるようにもなりました。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 松岡 裕之)