各地の自治体で身寄りがない高齢者の「終活」を支援する動きが広がっている。生前に葬儀や遺品整理などに関する意向を聞き、死後に備えてもらう。単身の高齢者が増加する中、安心して人生の最期を迎えるためのサポートをする。
 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、65歳以上の単独世帯は2022年に873万世帯と、01年の倍以上に増加。未婚化の進行で、将来的にはさらに増える見込みだ。
 神奈川県横須賀市は全国に先駆けて、15年から終活支援に乗り出した。身寄りのない低所得の単身高齢者から納骨する場所などを生前に聞き取る事業で、希望者は27万円の費用を事前に支払い、葬儀会社と生前契約を結ぶ。市は納骨までを見届ける。
 事業を始めたきっかけは、引き取り手がない無縁遺骨が増えたことだった。市の担当者は「身寄りのない人には生きているうちに備えてもらうことが必要だ」と強調。23年度末までに146人が登録し、このうち72人が生前の希望通りに埋葬されたという。
 横浜市では昨年度、高齢化が進む市内の団地で、身寄りのない単身高齢者を対象にした実証実験が始まった。社会福祉士や看護師らが支援者となり、病気になった際の治療法や死後の対応を確認。介護事業者などが設立した任意団体が中心となった取り組みで、市は実証を通じ、具体的な支援策などを検討する。
 一方、静岡市は今年1月、身寄りがない高齢者の身元保証や死後の事務を請け負う民間サービスについて、優良な事業者を認証する制度を創設。契約を巡るトラブルが問題となる中、「信頼できる事業者を紹介してほしい」との相談が増えていたという。
 サービスの費用や解約時の手続きをウェブサイトで公開するなど、市の基準を満たす事業者に3年間の「優良」認証を与える仕組み。認証事業者には毎年、活動報告を求めるなどして、問題がないかを確認する。市の担当者は「民間と手を取り合ってサポートしたい」と話した。 (C)時事通信社