最近、植物性食品指数(Plant-Based Diet Index;PDI)に動物性食品も含めた食品分類を併用して食事パターンを評価し、疾患との関連を検討する研究が増えている。米・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのSharan K. Rai氏らは、米国の医療従事者を対象としたコホート研究のデータを用いて痛風リスクと食事パターンとの関連を検討。特定の健康的な植物性食品の摂取により痛風リスクが低下することなどをJAMA Netw Open2024; 7: e2411707)に報告した。(関連記事「菜食主義でも閉経後の骨折リスク上昇せず」)

12万例超の長期追跡データを利用

 対象は、Health Professionals Follow-Up Study(1986~2012年)に参加した男性医療従事者とNurses' Health Study(1984~2010年)に参加した女性看護師のうち、登録時に痛風のない者。それぞれ4万3,703例(平均年齢53.8±9.8歳)と7万8,976例(同50.9±7.2歳)を抽出した。

 PDIは、12種の植物性食品を全体、健康的な食品7種(hPDI:全粒穀物、果物、野菜、ナッツ類、豆類、植物油、お茶とコーヒー)、健康的でない食品5種(uPDI:フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、加糖飲料、菓子・デザート)に層別化し、摂取頻度による五分位数で評価。さらに、動物性食品6種(動物性脂肪、乳製品、卵、魚類、肉類、その他の動物性食品)を加えた18種について個別に評価した。主要評価項目は痛風の新規発症で、両調査の結果を個別に集計してプールし、Cox比例ハザード回帰モデルにより背景を調整してハザード比(HR)を算出した。

hPDI、全粒穀物、お茶・コーヒーがリスク低下と関連

 270万4,899人・年の追跡期間中に、2,709例が新たに痛風を発症した。

 全体のPDIは、男女とも痛風との有意な関連はなかった(最低五分位群に対する最高五分位群のHR 1.02、95%CI 0.89~1.17、傾向性のP=0.63)。一方、hPDIは痛風リスクと有意な逆相関を(同0.79、0.69~0.91、傾向性のP=0.002)、uPDIは正相関を示した(同1.17、1.03~1.33、傾向性のP=0.02)uPDIと痛風リスクの相関は特に女性で強かった(同1.31、1.05~1.62、傾向性のP=0.01)

 個々の食品別に見ると、hPDIのうち全粒穀物(1食/日当たりのプールHR 0.93、95%CI 0.89~0.97、傾向性のP=0.002)とお茶・コーヒー(同0.95、0.92~0.97、傾向性のP<0.0001)、乳製品(同0.86、0.82~0.90、傾向性のP<0.0001)が独立して痛風リスク低下と関連していた。uPDIでは、フルーツジュース(同1.06、1.00~1.13、傾向性のP=0.04)と加糖飲料(同1.16、1.07~1.26、傾向性のP=0.0004)が痛風リスク上昇と関連していた。

菓子・デザートはリスク低下、植物油と魚類はリスク上昇と関連

 一方、心代謝疾患を対象とした既報との相違も見られた。uPDIに含まれる菓子・デザートは痛風リスクの低下と関連していた(1食/日当たりのプールHR 0.91、95%CI 0.87~0.96、傾向性のP=0.0002)。動物性脂肪がリスク上昇に関連していたのは予想通りだったが、hPDIに含まれる植物油もリスク上昇と関連していた(同1.16、1.04~1.29、傾向性のP=0.008)。また、肉類ではなく魚類がリスク上昇と関連しており(同1.26、1.09~1.44、傾向性のP=0.001)、精製穀物、果物、野菜、ナッツ類、豆類は、リスク上昇・低下のいずれとも関連がなかった。Rai氏らは「今後の研究で、これらの相違の原因となる背景機序を解明していくべき」と指摘している。

 厳格なビーガンやベジタリアンは、米国でさえ人口の3%にすぎず、日本ではさらに少ない。これに対し、動物性食品も取りながら植物性食品を増やす食事パターンは世界的に人気が高まりつつある。とはいえ、植物性食品全てが健康的とは限らないため、今回のようにhPDIとuPDIに分け、動物性食品も含めた個々の食品群の影響を評価する研究は、研究のしやすさの観点からだけでなく、健康への影響をより正確に評価する上でも重要である。

 同氏らは「現在、植物性食品のうち健康的なものの摂取を増やし、不健康なものを減らすことが推奨されているが、今回の結果は、この推奨を支持するものである」と結論している。

(小路浩史)