レーザー治療は非メラノーマ皮膚がん(NMSC)の新たな治療法として期待されており、さまざまなNMSCに対する有効性が報告されている。しかし、メラノーマへの有効性に関しては議論の余地がある。米・University of MiamiのYanci A. Algarin氏らは、メラノーマに対する治療法としてのレーザー治療の有効性についてPubMed収載論文の包括的レビューを実施。二酸化炭素(CO2)レーザー焼灼術は、メラノーマの姑息的治療(palliative treatment)に有効であるなどの結果をArch Dermatol Res(2024; 316: 244)に報告した(関連記事「水虫が足底のメラノーマ発症に関連」)。
「メラノーマ」「レーザー」を含む論文を包括的に検索
メラノーマは米国で5番目に罹患率が高い悪性がんで、早期診断により外科的に切除すれば良好な予後が期待できる一方、遠隔転移に至ると5年生存率は10%まで大きく低下する。治療法としては外科切除、放射線療法、化学療法、分子標的療法、免疫療法などの有効性が示されているものの、瘢痕形成や全身性副作用のリスクを伴うという課題がある。
そうした中、NMSCに対する有効性が報告されているレーザー治療は、非外科的治療の新たな選択肢として注目されている。全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の皮膚メラノーマガイドラインでは、CO2レーザー焼灼術をカテゴリー2Bの姑息的治療に分類しているが、レーザーの種類や設定、至適治療期間など詳細な推奨は提示していない。
そこでAlgarin氏らは今回、PubMedから「メラノーマ(melanoma、cutaneous melanoma、melanoma in situ)」と「レーザー(laser treatment、laser therapy、lasers)」をキーワードとして、1990~2023年に収載された英語論文を検索し包括的文献レビューを行った。組み入れ基準は、メラノーマに対するレーザー治療単独または補助療法の有効性を検討した査読付き学術誌に発表された論文とし、治療結果、追跡結果、再発率、治療に関する有害事象の情報が含まれるものとした。十分な転帰データがない、または重複する論文は除外した。
レーザーの種類と患者の選択には注意が必要
メラノーマに対するレーザー治療として、①固体レーザー、②ダイオードレーザー、③パルス色素レーザー、④CO2レーザー-の4種類が用いられていた。
固体レーザー単独療法については、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害因子p16INK4a陽性のメラノーマ細胞株に対する波長755nmのアレキサンドライトレーザーを照射したin vitro研究において、p16INK4a発現の上昇が認められた。p16INK4aはメラノーマの進行に関連することから、固体レーザー治療はp16INK4a発現上昇につながるDNA損傷を誘発し、メラノーマを進行させる可能性があると注意喚起している(Lasers Surg Med 2003; 32: 88-93)。
一方、stageⅠの顔面のメラノーマ患者47例を対象に波長1,060nmの高強度Ndレーザー単独療法(最大パルスエネルギー700J/1,000J)の効果を検討した後ろ向き研究では、5年生存率が82.9%と良好で重篤な副作用は報告されなかった。局所/遠隔転移率は23.4%で局所再発は認められなかったことから、良好な結果を得るには慎重な患者選択が不可欠であると報告されている(J BUON 2010; 15: 389-391)。
CO2レーザー焼灼術後、寛解を7.5年間維持
姑息的治療としての有効性について、1992年9月~2002年9月に波長10.6μmのCO2レーザー焼灼術(最大出力80W)を受けた切除不能の再発下肢メラノーマ患者42例(女性33例、年齢中央値73歳)を対象に再発抑制効果を検討した英国の研究では、再発までの期間中央値は5.2カ月(範囲1.2~72.0カ月)だった。生存した23例の初回焼灼後の期間中央値は5.4年(同0.5~10.0年)で、10例(43.5%)は1年以上再発を認めず、病勢進行による下肢切断例はなかった(Br J Surg 2004; 91: 893-895)。切除不能/再発皮膚メラノーマ患者16例559病変にCO2レーザー焼灼術を施行した英国の別の研究では、初回焼灼後12カ月時点で10例が寛解を維持し、うち6例は中央値7.5年と長期に寛解を維持した(Lasers Med Sci 2009; 24: 411-414)。他にも、複数の研究で皮膚または局所転移メラノーマに対する姑息的治療としてのCO2レーザー焼灼術の有効性が示されていた。一方、治療後1カ月で46.7%と高頻度に再発が認められ、局所再発の問題が解決されない限りメラノーマ治療の第一選択肢として考慮できないとする報告もあった(Eur J Surg Oncol 1997; 23: 435-438)。
以上の結果を踏まえ、Algarin氏らは「原発性メラノーマの標準治療は外科切除であり、まずは放射線療法、局所注射、免疫療法などの併用を検討すべきである」と断った上で、「外科切除が困難な転移性メラノーマや姑息的治療を希望する患者において、合併症を最低限にとどめつつ症状を最小化し、日常生活の改善を目指すレーザー治療は有用な選択肢となりうる」と結論している。
(栗原裕美)