能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県の奥能登地域(輪島、珠洲両市、穴水、能登両町)の公立4病院が、昨年度決算でいずれも大幅な赤字となり、赤字額が計12億円を超えることが9日、同県への取材で分かった。被災で過疎化に拍車が掛かり、さらなる赤字も見込まれる中、復興に向けて地域医療をどう確保するかが課題となっている。
 県によると、昨年度決算での赤字額は、珠洲市立珠洲市総合病院が約5億7000万円、輪島市立輪島病院が約2億3000万円、公立宇出津総合病院(能登町)が約3億2000万円、公立穴水総合病院が約1億1000万円。
 2022年度は宇出津総合病院が約300万円の赤字を計上したものの、他の3病院は黒字で、いずれも堅実な経営状況だったという。
 赤字の主な原因は患者数の減少だ。珠洲市総合病院では被災した医療スタッフの退職が相次ぎ、今年3月末までに40人以上が退職。人手不足などで稼働できる病床数が減り、入院患者は地震後半月で約90人から14人まで落ち込んだ。その後徐々に増加し、6月時点で約60人まで回復したものの、地震前の状況に戻る見通しは立たない。
 同病院の石井和公事務局長(59)は「このまま手をこまねいていると、今年度は7~8億円の赤字になる」と危機感を募らせる。「人口減少がかなり前倒しになることを見据えて、病院の集約や再編を考えるべきだ」と訴える。
 奥能登4市町の首長は地震前から、過疎化の進行で公立病院の経営が困難になる恐れがあるとして、4病院の機能を集約した新病院の設立を要望していた。
 県は月内にも検討会を設置し、奥能登の医療提供体制の強化策を議論する方針。ただ、被災に伴う対策が中心で、抜本的な議論は先送りされる見通しだ。県の担当者は「仮設住宅で暮らす住民のため、医療体制をどう整えるかを検討するのが先だ」と話した。 (C)時事通信社