フランス・Le Kremlin Bicêtre CedexのDavid Adams氏らは、遺伝性ATTRアミロイドポリニューロパチー(hereditary transthyretin amyloidosis with polyneuropathy;hATTR-PN)患者に対するパチシランの第Ⅱ相非盲検延長試験(OLE)と第Ⅲ相プラセボ対照ランダム化試験(RCT)APOLLOの参加者を対象としたグローバルOLEの最終結果をJAMA Neurol2025年1月13日オンライン版)に報告。「RNA干渉薬として最長の試験において、パチシランの安全性と有効性が確認できた。プラセボ群からパチシランに移行した患者の成績から、遺伝性ATTRアミロイドーシスhATTR)に対する同薬による早期治療開始の重要性が裏付けられた」と結論している。

プラセボ群もパチシランにスイッチし最長5年間継続

 hATTRはトランスサイレチン(TTR)遺伝子に変異が生じ、異常蛋白であるアミロイドがさまざまな臓器や神経、筋骨格組織に蓄積する疾患であり、多様な臨床病態を呈する。TTR遺伝子サイレンサーと呼ばれるTTR mRNAを分解する治療薬が複数開発されており、RNA干渉薬であるパチシランはその1つだ。

 グローバルOLEは、第Ⅱ相OLEと第Ⅲ相APOLLOの参加者を対象とした延長試験で、第Ⅱ相パチシラン群(25例)、APOLLOプラセボ群(49例)、APOLLOパチシラン群(137例)の計211例を登録。全例にパチシランを投与(0.3mg/kgを3週ごとに静注)し、最長5年間継続した。グローバルOLEベースラインの平均年齢は61.3±12.3歳で、男性が156例(73.9%)。211例中138例(65.4%)が試験を完遂し、このうち117例が親試験からパチシランを投与されていた患者(第Ⅱ相パチシラン群とAPOLLOパチシラン群)だった。

各種機能やQOL評価を改善あるいは悪化を抑制

 ポリニューロパチー障害(PND)スコアで評価した歩行能力の推移を見ると、グローバルOLEの完遂者はベースラインに比べ、76例(55.5%)が歩行能力を維持、13例(9.5%)で改善が認められた。ベースラインのPNDスコアがⅢA/ⅢB(歩行に杖または松葉杖が必要)だった49例のうち3例(6.1%)が改善、29例(59.2%)が不変で、17例(34.7%)に悪化が見られた。

 神経障害スコア(NIS)の変化は、平均10.9±14.7だった。また、自律神経の機能不全によるhATTR-PN進行の特徴である重度の栄養失調を修正BMI〔mBMI、BMI × 血清アルブミン(g/L)〕で評価したところ、mBMIは5年間で46.4±120.7上昇した。

 患者報告アウトカムであるNorfolk Quality of Life-Diabetic Neuropathy(Norfolk QOL-DN)とRasch-Built Overall Disability Scale (R-ODS)も、それぞれ平均4.1±16.7、-3.7±6.2変化した。

 以上の各評価指標について、第Ⅱ相パチシラン群、APOLLOプラセボ群、APOLLOパチシラン群に分けて検討したところ、他の2群に比べAPOLLOプラセボ群で明らかに改善の度合いが低い、あるいは悪化の程度が大きく、早期からのパチシランによる治療の重要性が裏付けられた。

 脱落の原因となった有害事象は47例(22.3%)に発生した。infusion reactionは34例(16.1%)に発生し、試験期間中の死亡は41例(19.4%)だった。生命予後についても、早期からパチシランを投与していた患者で明らかに良好であった。

(医学ライター・木本 治)