福岡大学小児科の坂口崇氏らは、長崎県壱岐市の慢性腎臓病および生活習慣病に関する観察研究(Iki epidemiological Study of atheroSclerosis And Chronic Kidney Disease;ISSA-CKD)の参加者データを解析した結果、「トリグリセライド(TG)値は、空腹時・非空腹時を問わず高尿酸血症の発症リスクと関連する」とSci Rep(2025; 15: 5764)に報告した。
空腹時TG値に焦点を絞った報告がほとんど
高尿酸血症は、推計患者数が世界で約5,400万例の痛風と密接な関係がある。高尿酸血症はほかにも高血圧、慢性腎臓病(CKD)、アテローム性動脈硬化症などのリスク上昇と関連している。血清TG値が高尿酸血症と関連するとの報告は多いが、過去の報告は空腹時TG値に焦点を絞ったものがほとんどである。また、米国や南アジア、中国からのエビデンスが中心で、日本人にどの程度適用できるかは不明である。
坂口氏らは2008~19年に健康診断を受けたISSA-CKD参加者のうち、①受診回数が1回だけ、②ベースラインで高尿酸血症であった、③TG値の情報が欠落している―などを除いた5,576例をベースラインのTG値別に3群〔グループ1(男性83mg/dL未満、女性77mg/dL未満)、グループ2(同83~129mg/dL、77~114mg/dL)、グループ3(同130mg/dL以上、115mg/dL以上)〕に分類。平均追跡期間5.4年間における高尿酸血症発症とTG値との関連をCox回帰ハザードモデルで解析した。さらに、測定したTG値が空腹時(最後の食事から10時間以上経過後の測定と定義)のものか非空腹時かで分けたサブグループ解析を行った。
非空腹時TG測定の簡便性を取り入れた予防戦略の可能性
5,576例のベースラインの平均年齢は60.5歳。男性2,334例(41.9%)だった。多変量で調整後の高尿酸血症新規発症リスクのハザード比(aHR)はグループ1と比べて、男性のグループ2が1.30(95%CI 1.02~1.66)、グループ3が1.81(同1.42~2.30)(P<0.0001)、女性では1.66(同0.96~2.89)、2.51(1.48~4.28)(P=0.0004)と、TG値が高いほど高尿酸血症発症リスクが高いことが判明した。
TG測定時の状態(空腹時 vs. 非空腹時)別に検討したところ、TG測定が空腹時だった男性(1,528例)の高尿酸血症発症aHRは、グループ2が1.28(95%CI 0.96~1.71)、グループ3が1.88(同1.42~2.49)、非空腹時だった男性(598例)ではそれぞれ1.11(同0.71~1.73)、1.46(同0.94~2.24)(交互作用のP=0.546)、女性では空腹時(2,241例)のaHRがそれぞれ1.77(同0.96~3.29)、2.56(同1.40~4.68)、非空腹時(715例)が1.44(同0.42~4.96)、2.60(同0.88~7.65)(交互作用のP=0.886)といずれの場合も高尿酸血症発症に及ぼす影響に明確な差は見られなかった。
以上の結果について、坂口氏らは「本研究では、TG値と高尿酸血症発症との関連を、空腹時TG値と非空腹時TG値に分けて検討した。近年、非空腹時TG測定の簡便性と重要性が注目を集めており、今回の検討では、TG値は空腹時・非空腹時とも高尿酸血症発症の新規発症と明らかな関連を認めた。空腹時・非空腹時を問わない予防戦略は、高尿酸血症発症の予防、ひいては痛風の疾病負担軽減に役立つ可能性がある」と結論している。
(医学ライター・木本 治)