未治療でALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する第三世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ロルラチニブは、第一世代TKIクリゾチニブと比較した第Ⅲ相ランダム化試験CROWNにおいて、5年時の無増悪生存(PFS)が60%という前例のない効果が報告されている。中国・Guangdong Provincial People's HospitalのYi-Long Wu氏らは今回、CROWN試験参加者のうちアジア人(日本、韓国、中国、台湾、シンガポール、香港)のデータを抽出し、サブグループ解析を実施。「ロルラチニブはアジア人のALK陽性NSCLC患者においても、CROWN試験参加者全体と一致した有効性と安全性が確認された」とJ Thorac Oncol(2025年2月28日オンライン版)に報告した。(関連記事:「ALK陽性NSCLCにロルラチニブが優位」、「進行NSCLC、ロルラチニブで予後が大幅改善」)
PFSのハザード比は0.22
CROWN試験でランダム割付けの対象となったアジア人サブグループは120例(ロルラチニブ群59例、クリゾチニブ群61例)。ベースラインの患者背景は両群間でバランスが取れていた。
追跡期間中〔ロルラチニブ群:中央値62.4カ月(95%CI 60.6~66.3カ月)、クリゾチニブ群:同55.1カ月(同36.8~未到達)〕、ロルラチニブ群の22例(37%)、クリゾチニブ群の46例(75%)にPFSイベント(腫瘍増悪または死亡)が発生。PFS中央値はクリゾチニブ群の9.2カ月(95%CI 7.2~12.7カ月)に対し、ロルラチニブ群は未到達(同64.3カ月~未到達)、ハザード比(HR)0.22(95%CI 0.13~0.37)だった。
4年PFSおよび5年PFSはロルラチニブ群が63%(95%CI 49~74%)と63%(同49~74%)、クリゾチニブ群は12%(同5~23%)と7%(同2~17%)だった。
脳転移リスクも軽減
ベースラインで脳転移を有していた患者(ロルラチニブ群13例、クリゾチニブ群16例)、脳転移を有していなかった患者(同46例、45例)で比べても、PFSのHRは0.05(95%CI 0.01~0.24)、0.28(同0.16~0.52)とロルラチニブ群で低かった。
客観的奏効率(ORR)で評価した臨床的意味のある改善は、ロルラチニブ群が81%(95%CI 69~90%)、クリゾチニブ群が59%(同46~71%)だった。頭蓋内進行までの期間(IC TTP)は、クリゾチニブ群の14.6カ月(95%CI 9.2~27.4カ月)に対し、ロルラチニブ群は未到達(同未到達~未到達)だった(HR 0.01、95%CI <0.01~0.11)。5年時点における頭蓋内進行なしの確率はクリゾチニブ群の16%(95%CI 4~36%)に対し、ロルラチニブ群98%(同84~100%)だった。
ロルラチニブ群における投与後16週以内の投与量減量群(9例)と非減量群(42例)を比べたところ、PFSは減量群が未到達(95%CI 未到達~未到達)、非減量群が未到達(同60.3カ月~未到達)、IC TTPも両群において未到達だった。
新規の安全性上の懸念も確認されず
安全性プロファイルに関しても試験全体の参加者の解析で得られた結果と一致するものであり、新規の懸念は見出されなかった。
以上の結果を踏まえWu氏らは「CROWN試験のアジア人に限定したサブグループ解析でも、ロルラチニブの有効性と安全性は、全参加者の解析で得られたものと比べ、一貫していた」と結論。「サンプル数の少なさ、事後解析であり統計学的比較がなされていないことは、本サブグループ解析の限界である」と付言している。
(医学ライター・木本 治)