腹部大動脈瘤患者に対してトリカプリンを投与する臨床研究を開始
一般財団法人栩野財団
ー 大阪大学とともに疾患克服に挑む ー
ヒト腹部大動脈瘤造影3D-MDCT画像 Tanaka H, Zaima N, et al. PLoS ONE 8(2), 2013
一般財団法人栩野財団(以下、当財団)と大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座 樺 敬人 特任研究員(常勤)、平野 賢一 特任教授(常勤)、同 循環器内科学講座、心臓血管外科学講座、放射線統合医学講座の研究グループは、腹部大動脈瘤の患者さんに対して、トリカプリンを投与する世界初の臨床試験を開始しました。これまで腹部大動脈瘤は、手術以外に有効な治療方法がなく、破裂の危険性が高まる大きさ(直径50mm以上)になるまでは、経過観察されています。
これまでに、近畿大学農学部 応用生命化学科 財満 信宏 教授、大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座らの研究グループは、母乳にも含まれる栄養成分であるトリカプリンを腹部大動脈瘤のラットに与えると、一度できた腹部大動脈瘤が退縮(縮小)することや、発症前に投与しておくと腹部大動脈瘤ができなくなることを発見しました。
この成果をもとに、当財団と大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座の研究グループは、腹部大動脈瘤の患者さんに対して、高純度トリカプリンカプセル「カプリンHI(R)」を経口投与する臨床試験を開始しました。本試験において、トリカプリン投与により腹部大動脈瘤に良い効果が確認されれば、手術適応のサイズになるまで待つしかない、本疾患に対する全く新しい治療法開発の第1歩となります。
本臨床試験は大阪大学医学部附属病院 認定臨床研究審査委員会にて2024年5月9日に承認され、大阪大学と当財団との共同研究「血管疾患に対するトリカプリンを用いた治療法の開発研究」を基盤として2024年5月17日より大阪大学医学部附属病院 循環器内科で開始されました。
研究の背景
腹部大動脈瘤は、無症状のうちに少しずつ進行して突然破裂し命を奪う疾患で、現在、手術以外に有効な治療方法がないと考えられています。しかし、動脈瘤の大きさが50mmを超えるまではリスク・ベネフィットの関係から積極的な手術は行われず、CTやエコー検査をしながら経過観察されています。いつ破裂するかわからない強い不安の中で有効な治療法が無く、予防や治療法の開発が強く望まれてきました。その中で近畿大学農学部 応用生命化学科 財満 信宏 教授、大阪大学中性脂肪学共同研究講座の研究グループが行った研究結果から、今回の臨床試験が計画されました。トリカプリンは既に他の病気の治療法として安全性が確認されていましたが、ヒトの腹部大動脈瘤への安全性や効果についてのデータがないため、本研究を実施して検討いたします。
臨床試験の内容
本研究の目的は、1.栄養成分トリカプリンが腹部大動脈瘤の患者に安全に使用できるか、2.ラットで見られた腹部大動脈瘤の退縮(縮小)効果がヒトでも確認できるかを検証することです。50歳~85歳の腹部大動脈瘤(直径45mm以下)の患者さん10名を対象に、1年間実施します。1日3回トリカプリンのカプセル(カプリンHI(R))を毎日服用してもらい、3か月ごとに診察や検査を行います。効果の確認は、一般的な血液検査や造影剤を使用した腹部CT検査を行い、データを詳細に解析することで評価します。
本研究が社会に与える影響
本研究で腹部大動脈瘤の退縮(縮小)が確認されれば、より詳細な効果やメカニズムについて臨床試験で検討し、将来的に腹部大動脈瘤の薬物治療が実現する可能性があります。また、新しい治療法が確立されれば、現在手術適応まで経過観察となっている患者さんへの早期介入が可能となり、それらは患者さんへの大きな福音となると考えられます。
研究者のコメント
樺 敬人 特任研究員(常勤)(大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座)
「腹部大動脈瘤の患者さん達は進行を抑える手段がないため、いつ破裂するのかわからず、絶えず不安を抱えて過ごす日々を余儀なくされています。トリカプリンの服用で腹部大動脈瘤を安全に治療できることがわかれば、破裂する恐怖、手術への不安、医療資源の問題など将来的に様々な点が解決できることになります。この研究が多くの腹部大動脈瘤患者さんの悲願である、内服による治療法の開発に向けて最初の大きな一歩となることを祈っております。」
用語説明
トリカプリン
炭素(C)の数が10個の脂肪酸で構成される中性脂肪(TG)の一種で、C10-TGと表記されることもある。体内ですぐにエネルギー源として使用されるため、摂取しても血中の中性脂肪値の上昇が起こりにくい特性がある。母乳やココナッツミルク、チーズ等に含まれるが、その含有量はごくわずかである。
カプリンHI(R)
トリカプリンを高純度で含有した健康食品。大阪大学と栩野財団との共同研究「中性脂肪蓄積心筋血管症に対するトリカプリン栄養療法の開発研究」において開発され、大阪大学と当財団の共有成果物である。
特記事項
本研究は2024年5月17日(金)より、大阪大学医学部附属病院 循環器内科において、一般財団法人栩野財団との共同研究で開始されました。
研究課題名:“腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験”
英語名:First-in-Human Abdominal Aortic Aneurysms trial with Tricaprin(F-HAAAT)
研究責任医師:樺 敬人
所属:大阪大学医学部附属病院 循環器内科/大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座
開催予定のイベント
イベント名:「腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験(F-HAAAT試験)」
日時:2024年7月5日(金) 18:30~20:00(予定)
場所:大阪大学最先端医療イノベーションセンター(CoMIT) 1Fマルチメディアホール(現地+WEB ハイブリッド開催)
主催:大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座
共催:大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科、放射線統合医学講座、一般社団法人中性脂肪学会、一般財団法人栩野財団
後援:大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 未来医療センター
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ー 大阪大学とともに疾患克服に挑む ー
ヒト腹部大動脈瘤造影3D-MDCT画像 Tanaka H, Zaima N, et al. PLoS ONE 8(2), 2013
一般財団法人栩野財団(以下、当財団)と大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座 樺 敬人 特任研究員(常勤)、平野 賢一 特任教授(常勤)、同 循環器内科学講座、心臓血管外科学講座、放射線統合医学講座の研究グループは、腹部大動脈瘤の患者さんに対して、トリカプリンを投与する世界初の臨床試験を開始しました。これまで腹部大動脈瘤は、手術以外に有効な治療方法がなく、破裂の危険性が高まる大きさ(直径50mm以上)になるまでは、経過観察されています。
これまでに、近畿大学農学部 応用生命化学科 財満 信宏 教授、大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座らの研究グループは、母乳にも含まれる栄養成分であるトリカプリンを腹部大動脈瘤のラットに与えると、一度できた腹部大動脈瘤が退縮(縮小)することや、発症前に投与しておくと腹部大動脈瘤ができなくなることを発見しました。
この成果をもとに、当財団と大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座の研究グループは、腹部大動脈瘤の患者さんに対して、高純度トリカプリンカプセル「カプリンHI(R)」を経口投与する臨床試験を開始しました。本試験において、トリカプリン投与により腹部大動脈瘤に良い効果が確認されれば、手術適応のサイズになるまで待つしかない、本疾患に対する全く新しい治療法開発の第1歩となります。
本臨床試験は大阪大学医学部附属病院 認定臨床研究審査委員会にて2024年5月9日に承認され、大阪大学と当財団との共同研究「血管疾患に対するトリカプリンを用いた治療法の開発研究」を基盤として2024年5月17日より大阪大学医学部附属病院 循環器内科で開始されました。
研究の背景
腹部大動脈瘤は、無症状のうちに少しずつ進行して突然破裂し命を奪う疾患で、現在、手術以外に有効な治療方法がないと考えられています。しかし、動脈瘤の大きさが50mmを超えるまではリスク・ベネフィットの関係から積極的な手術は行われず、CTやエコー検査をしながら経過観察されています。いつ破裂するかわからない強い不安の中で有効な治療法が無く、予防や治療法の開発が強く望まれてきました。その中で近畿大学農学部 応用生命化学科 財満 信宏 教授、大阪大学中性脂肪学共同研究講座の研究グループが行った研究結果から、今回の臨床試験が計画されました。トリカプリンは既に他の病気の治療法として安全性が確認されていましたが、ヒトの腹部大動脈瘤への安全性や効果についてのデータがないため、本研究を実施して検討いたします。
臨床試験の内容
本研究の目的は、1.栄養成分トリカプリンが腹部大動脈瘤の患者に安全に使用できるか、2.ラットで見られた腹部大動脈瘤の退縮(縮小)効果がヒトでも確認できるかを検証することです。50歳~85歳の腹部大動脈瘤(直径45mm以下)の患者さん10名を対象に、1年間実施します。1日3回トリカプリンのカプセル(カプリンHI(R))を毎日服用してもらい、3か月ごとに診察や検査を行います。効果の確認は、一般的な血液検査や造影剤を使用した腹部CT検査を行い、データを詳細に解析することで評価します。
本研究が社会に与える影響
本研究で腹部大動脈瘤の退縮(縮小)が確認されれば、より詳細な効果やメカニズムについて臨床試験で検討し、将来的に腹部大動脈瘤の薬物治療が実現する可能性があります。また、新しい治療法が確立されれば、現在手術適応まで経過観察となっている患者さんへの早期介入が可能となり、それらは患者さんへの大きな福音となると考えられます。
研究者のコメント
樺 敬人 特任研究員(常勤)(大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座)
「腹部大動脈瘤の患者さん達は進行を抑える手段がないため、いつ破裂するのかわからず、絶えず不安を抱えて過ごす日々を余儀なくされています。トリカプリンの服用で腹部大動脈瘤を安全に治療できることがわかれば、破裂する恐怖、手術への不安、医療資源の問題など将来的に様々な点が解決できることになります。この研究が多くの腹部大動脈瘤患者さんの悲願である、内服による治療法の開発に向けて最初の大きな一歩となることを祈っております。」
用語説明
トリカプリン
炭素(C)の数が10個の脂肪酸で構成される中性脂肪(TG)の一種で、C10-TGと表記されることもある。体内ですぐにエネルギー源として使用されるため、摂取しても血中の中性脂肪値の上昇が起こりにくい特性がある。母乳やココナッツミルク、チーズ等に含まれるが、その含有量はごくわずかである。
カプリンHI(R)
トリカプリンを高純度で含有した健康食品。大阪大学と栩野財団との共同研究「中性脂肪蓄積心筋血管症に対するトリカプリン栄養療法の開発研究」において開発され、大阪大学と当財団の共有成果物である。
特記事項
本研究は2024年5月17日(金)より、大阪大学医学部附属病院 循環器内科において、一般財団法人栩野財団との共同研究で開始されました。
研究課題名:“腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験”
英語名:First-in-Human Abdominal Aortic Aneurysms trial with Tricaprin(F-HAAAT)
研究責任医師:樺 敬人
所属:大阪大学医学部附属病院 循環器内科/大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座
開催予定のイベント
イベント名:「腹部大動脈瘤患者に対する世界初のトリカプリン投与試験(F-HAAAT試験)」
日時:2024年7月5日(金) 18:30~20:00(予定)
場所:大阪大学最先端医療イノベーションセンター(CoMIT) 1Fマルチメディアホール(現地+WEB ハイブリッド開催)
主催:大阪大学大学院医学系研究科 中性脂肪学共同研究講座
共催:大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科、放射線統合医学講座、一般社団法人中性脂肪学会、一般財団法人栩野財団
後援:大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 未来医療センター
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(2024/06/20 11:00)
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