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「アルハラ」 過剰飲酒はご法度
=花見・酒の季節-救急車呼ぶ前に注意

 大学の卒業式や入社式に伴う宴席から花見まで、酒に親しむ機会が増える。盛り上がりたいという集団心理が加わって過剰な飲酒や「一気飲みの強要」などアルコールハラスメント(アルハラ)とされる行為で急性アルコール中毒に陥り、救急車の出動を要請する事例が毎年繰り返されている。しかし、こうした飲酒の危険性に対する認知度はまだ低い。

深刻泥酔状態で救急車で搬送されることも=湘南鎌倉総合病院提供

 ◇最悪は死の恐れ

 「アルコールを自身の分解能力以上に摂取した場合は、認知機能や身体機能の低下に始まり、意識の混乱などを経て最も深刻な場合は呼吸中枢のまひによる呼吸困難に陥る。このほかにも物を飲み込む嚥下(えんげ)機能が大きく低下してしまい、口の中の吐しゃ物を吐き出せずに気管を詰まらせて窒息に至る危険も生じる。医学的に命の危険があるのは最後の段階だ」

 湘南鎌倉総合病院救命救急センター長の山上浩医師(救急科)は、こう強調する。その上で「呼吸困難や窒息に至る前にも幾つものサイン(兆候)が出ているので、周囲が適切に対応してくれれば、最悪の事態は防げる可能性が高まる」と話す。

 ◇泥酔に至る変化は

 具体的に兆候の変化を追うと―。まず会話がかみ合わなくなったり、飲酒前に比べて感情の起伏が激しくなったりする。次に思考能力や平衡感覚の低下、とっさのときに身をかわせなくなるような反射神経の鈍化などが起きる。さらに意識が薄れて寝込んでしまったり、動けなくなったり、嘔吐(おうと)してしまうといった泥酔状態に至る。

 「最初の段階でも、対人トラブルを引き起こす可能性が生じる。平衡感覚や反射神経に影響が生じれば、転倒や階段の踏み外しなどにつながる危険性が高くなる」と山上医師は指摘する。

 ウイスキーなどアルコール度数の高い蒸留酒を短時間に多量に摂取した場合はもちろん、人によってはよりアルコール度数の低いワインや日本酒、ビールなどでも泥酔状態に陥ってしまう。「アルコール度数が低いから」「大して飲んでいないから」などと油断するのは禁物だ。

 ◇アルコール分解度に個人差

 「摂取されたアルコールは体内で分解されるが、その分解能力は個人間で大きな違いがある。ごく少量で顔が真っ赤になるような人は分解能力が低い。ただ、本人が思っているより分解能力が低く、泥酔までの許容量が小さい人もいる。無理強いは当然避ける。少しでも調子がおかしい、と思ったら周囲は酒を勧めないことだ」

湘南鎌倉総合病院救命センター長の山上浩医師

 泥酔や急性アルコール中毒で救急搬送されたり、友人などに連れられて救急外来を受診したりした患者の多くは、昏睡(こんすい)や意識レベルの低下だけでなく、転倒や打撲などをしている。

 「急性アルコール中毒により呼吸が停止しているような重篤な場合には気管挿管(そうかん)による人工呼吸や脱水状態に対応するための点滴をする。しかし、多くはそこまで深刻な状況でなく、嘔吐やベッドからの転落、病状の急変がないように注意しながら数時間経過観察すれば回復する」

 ◇急性中毒以外の問題も

 しかし、転倒や打撲などをしている場合は別だ。「頭を打っていれば、見た目に外傷が認められなくても脳挫傷の危険も考慮し、多くの場合で頭部CT検査を行う。足や腕、肋骨(ろっこつ)などに骨折の可能性があれば、その部分の検査をする。このような急性アルコール中毒以外の問題についても確認が重要だ」と山上医師は言う。

 必要とされるのが、搬送前に患者がどのような状態だったかという情報。日常と比べた当日の飲酒量や、飲み始めてからどのような様子だったのか、立ち居振る舞いに変化はなかったのかなどだ。「情報を提供できるのは、一緒に飲んでいた人しかいない。病院に付き添った人からこれらの情報が得られるかどうかが、診療の迅速性を大きく左右する」と同医師は訴える。

お花見の酒もほどほどに

 ◇高齢者も危ない

 もっとも、飲酒による問題は、若い人たちだけに限らない。泥酔に至るのを別にして、深酒をして帰宅途中や自宅で転倒したり、階段を踏み外して落ちてしまったりといった理由で受診する人の多くは60歳以上の年配者が圧倒的に多い。

 「反射神経や平衡感覚だけでなく、アルコールの分解能力も加齢とともに衰えていく。以前は大丈夫だった酒量でも、足がふらついたり、注意が散漫になったりしてしまうことは珍しくない」。特に高血圧や高血糖などの持病があれば、より自重して酒量を控えた方がよい、と注意している。(鈴木豊)


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