特集

デング熱、狂犬病の警戒も忘れずに
リゾートでも病気・感染症の危険
海外旅行先によりワクチン接種を

 感染症対策でワクチンも

 一般的な疾患以上に問題なのが、渡航先での感染症だ。「現在、東南アジア各地では蚊が媒介するデング熱の流行が激しい。さらに、フィリピンを中心にベトナムやインドネシアにかけてはしかも流行しており、警戒が必要だ」と、浜田教授は警鐘を鳴らしている。

 このうちデング熱は、昼間に活動する蚊が媒介するので、虫よけスプレーをこまめに使い、長袖、長ズボンなど皮膚の露出を抑える服装などである程度予防できる。一方、空気感染によるはしかについては、ワクチン以外に有効な予防策がない。

 「国内と同様に、ワクチンの接種を受けていなかったり、受けていても効果が弱まったりしている可能性のある人は、検査を受けてから旅行前にワクチン接種を受けた方が安全だ」

 ワクチンの効果が有効になるのは、接種後1週間から10日かかることも覚えておきたい。

東京医科大学病院渡航者医療センターの浜田篤郎教授

東京医科大学病院渡航者医療センターの浜田篤郎教授

 ◇恐ろしい「狂犬病

 海外では「狂犬病」の危険もある。病名から犬にかまれて感染すると考えている人もいるだろう。実際は、コウモリやアライグマなど多くの動物が媒介し、「感染・発病した場合の死亡率は100%」といわれる怖い病気で、先進国から発展途上国まで広く分布している。

 「狂犬病のワクチンは人用と動物用があり、人用はかまれる前のものと、かまれた後に接種するものに分かれる。人の事前ワクチンは長期滞在者が主な対象のため、動物用狂犬病ワクチンを接種されていることが確認されていない動物にかまれた場合、その動物が感染していることを前提に対応する必要がある」と浜田教授は話す。

 かまれた場合は、まず傷口をよくせっけんと清水で洗い、現地医療機関ですぐに人用の事後ワクチンを接種して発病を防ぐ。ワクチンは5回の接種が必要なので、帰国後も早急に専門医療機関を受診してワクチンを打ち続けて経過を観察しなければならない。

 「野良犬や野生のアライグマなどはもちろん、レジャー施設で動物の赤ちゃんを抱くようなイベントでも注意してほしい。特に子どもは動物に近づくことが多い。軽くかまれた程度では親に報告しないこともあるので、子どもから目を離さないようにすることが大切だ」

動物との触れ合いには注意したい(EPA時事)

動物との触れ合いには注意したい(EPA時事)

 ◇常備薬、持病の薬を持参

 帰国後も安心は禁物。はしかにしても、他の感染症にしても帰国後に発症し、体調の不調に気づくことも珍しくないからだ。このような場合は医療機関を受診する必要があるが、感染制御の観点から、可能なら事前に電話で海外旅行をした直後であること、どのような症状があるのかなどをかかりつけ医らに相談し、どのような医療機関を受診すべきか指示をあおぐとよい。

 医療機関に受診するほどではない体調不良についても、備えは欠かせない。

 「訪問先が欧米や東南アジアなどのリゾートでも、市販の総合感冒薬と下痢止めや整腸剤、虫に刺されたときの薬と虫よけ、ばんそうこうやウエットティッシュなどは5日分くらい用意しておいた方がよい。持病があって医師から処方をされている人は、事前にかかりつけ医に相談の上、処方されている薬の英語名を教えてもらい、日程より多めに薬を持参してほしい」

 一見整備されたリゾート地の遊具なども、日本に比べれば安全性が低いことも少なくない。ビーチはもちろん、プールなどでも子どもから目を離さないことだ。予備知識を持った上で、安全で快適な海外旅行を楽しんでほしい。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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