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基礎研究に定評、多職種連携のパイオニア
開学50年で名称変更、2年目に―藤田医科大学

   藤田医科大学は1968年、生化学研究者である藤田啓介総長が「独創一理(一人ひとりの創造力が、新しい時代を切り拓く力となり得る)」の建学の理念を掲げて創設した。当初から一貫して多職種連携教育を行うと同時に、基礎研究を重視した独自の教育プログラムを開発。英国の教育専門誌が毎年発表する「THE世界大学ランキング」で、日本の私立大学全体の中で最高評価を得るなど、海外での評価も高い。

 50周年を迎えた昨年には、藤田保健衛生大学から藤田医科大学に名称を変更。病床数1435床の日本最大規模の大学病院を併設し、地域医療のみならず、世界にはばたく人材の育成を目指している。岩田仲生医学部長は「自身の生活の質を優先するのではなく、病気や障がいで苦しんでいる方々に共感を持ちながら常に自己研鑽(けんさん)を怠らず、身を粉にして働く覚悟のある人に来てほしい」と話す。

 ◇チーム医療を教育の中心に

 インタビューに応える岩田仲生医学部長
 藤田医科大学を経営する学校法人藤田学園は、看護師や臨床検査技師の養成を先行させ、その後、医学部を開設したという経緯があり、同大学はチーム医療を教育の中心に置いてきた。今やごく当たり前のように認識されているチーム医療のパイオニア的な存在だ。

 創設以来、重要な教育プログラムとして継続している「アセンブリ教育」は、入学から卒業までの在学期間を通して医師、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、臨床工学技士、作業療法士を目指す学生が学部・学科の垣根を超えて交流し、多職種連携を学ぶ。最近では、藤田医科大学では養成していない薬剤師、歯科医、社会福祉士などを目指す学生も他大学から参加するなど、時代に合わせて教育内容を進化させている。

 「医学生も他学科の学生と共に学び、交流することで、コミュニケーション能力を高め、チーム医療を実践的に学んでいきます」と岩田医学部長。

 ◇基礎研究を重視

 大学の創設者である藤田氏が基礎研究者ということから、基礎研究を重視する伝統がある。英教育情報誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」が発表する「THE世界大学ランキング2019」で、日本の全私立大学中1位(全体の401―500位)を取得したのは、論文の引用スコア(どれだけ他の研究者たちへ影響を及ぼす論文を発表したか)が大幅に向上している点が評価されてのことだ。

 「ただ、世界的にまだまだ知名度が低いので、これからだと思っています。昨年、大学の名称を変更したのも、前の藤田保健衛生大学では、医学部がある大学だと認知されにくかったためです」

 ◇最先端技術を強化

 大学の名称を藤田保健衛生大学から変更した
 同大学には、内視鏡下手術支援ロボット「ダビンチ」のトレーニングセンターがある。2012年、日本で初めて臨床と結びついたトレーニングセンターとしてオープンした。医学部の解剖実習では、献体された遺体を使った手術のシミュレーションを行うが、今年1月からはダビンチを使った手術の実習も始まった。

 「当時ソフトバンクホークスの監督だった王貞治さんの腹腔鏡胃がん手術をしたことで知られる宇山一朗先生をはじめ、ロボット手術においては日本のトップレベルの外科医が各領域にそろっています」と岩田医学部長。

 遺伝子や血液などの生体サンプルを匿名化して保存し、一元管理するバイオバンクも今年から稼働。これまでの臨床研究では、研究者が個別に、目的にあった患者に同意を得てサンプルを集めていたが、バンク化することで、複数の診療科からより多くのサンプルを集められるようになった。これからの医学研究に不可欠なビッグデータを基盤とした対照群の設定も容易になり、さらに研究が進めやすい環境が整う。

 5月末にはセル・プロセッシング・センター(CPC、再生医療用の細胞培養センター)も稼働する予定。遅くとも年度内には藤田医科大学で初の再生医療による治療を行えるよう準備を進めている。胎盤や脂肪組織から体性幹細胞を作って行う治療を想定しており、当面、慢性心筋梗塞や肝硬変の患者の臓器再生を目指す。

 

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