医学トップの視座

人間性の育成を重視
山陰の地域医療を支える-鳥取大学医学部

 鳥取大学医学部は、米子医学専門学校、米子医科大学を母体として1949年に設立され、山陰地方の医学教育、研究、診療、人材育成の中核としての役割を果たしてきた。全人的な医療を志す医学部の教育方針は、入学試験の方法や教育カリキュラムに至るまで随所に生かされている。地域性を生かした大規模コホート研究や、低侵襲医療への取り組み、国内初となる「がんウイルス療法」の開発など研究分野での成果も目覚ましい。

 黒沢洋一医学部長は「少子高齢化、グローバル化が進む今後の医療にどう対応していくのか、これからの若い人たちに、医療をめぐるさまざまな問題への解決策を見つけていってほしい」とエールを送る。

インタビューに応える黒沢洋一・鳥取大学医学部長

 ◇地域と交流

 鳥取大学医学部は、開設当初から地域に開かれた大学として運営されている。学園祭に地域住民を招き、学生たちが病気の基礎知識を分かりやすく解説するなどの交流を続けてきた。

 入学後の早い段階で学生が地域に出かけて行き、地域医療体験や福祉施設に入所する高齢者との交流、早期体験ボランティアを行っているのも、こうした伝統を受け継いでのことだ。高度先進医療に間近で触れられる大学病院のほかに、地域医療教育の拠点を2カ所(日野町、大山町)に設け、地域医療を実践で学べる環境も整備されている。

 地域の聴覚障害者を招いて授業をしてもらう「基礎手話」は1年生の必修科目。15コマの講義を終えると、1年生全員が簡単な手話ができるようになるという。

 黒沢医学部長は「医師にとって最も大切なのは、目の前の人に何とか協力したいという気持ち。コミュニケーション力や思いやりの心を育む人間性涵養(かんよう)教育に力を入れているのが医学部の教育の一番の特徴」と強調する。

鳥取大学医学部

 ◇学生が会議に参加

 医学部の教育内容を決定する医学部教育委員会に学生の代表が参加するのも、他にあまり例を見ない取り組みの一つだ。

 「試験の日程なども、以前は教員の都合だけで決めていましたが、学生の希望も聞いて合同で決めるようにしています。学生が主体的に学ぶモチベーションを高めることにも役立っています」と黒沢医学部長。

 今後は学外の医療機関の医師や住民の委員会への参加も検討している。グローバル化に向けて日本医学教育評価機構が実施する医学教育分野別評価を今年3月に受審した際、学生が教育の意思決定の場に参加していることが高く評価されたという。

 ◇受験生全員を面接

 入学者の受け入れ方針で、特に重視しているのは「思いやり、責任感および協調性のある健全な考えを持つ人」という点。そうした学生を選抜するため、入学試験受験者全員に対し、面接を行っている。前期と後期、推薦を合わせて約700人に上る受験生に教員総出で対応する。

 「地域医療をやりたいとか、身内に病人がいて医師を目指した、などはよくあるパターンですが、準備してきた回答はすぐに分かります。むしろ、学生が今まで何をしてきたのかを聞くことで、思いやりの気持ちがあるかどうか、将来、地域医療をやってくれそうかが分かります」

 入学した学生たちは、みな人柄もよく面接の手間をかけただけのことはあるという。

 医師国試の合格率は例年、全国平均を大きく上回る。「昔はずっと低迷していて、あまりに低いので国家試験用の対策をするようになりました」と黒沢医学部長。

 医師国試対策の授業を開始したほか、現在使用していない校舎を改造して、学生が集まって勉強できる場所を設け、模擬試験の費用を補助するなどの対策をとった結果、2015年には合格率100%を達成した。

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