治療・予防

母から胎児へ感染―先天性風疹症候群
目や耳、心臓に障害

 2018年から風疹の流行が続いている。その規模は、13年の大流行に次いで2番目となる。妊婦が感染すると、生まれてくる子どもが先天性風疹症候群になり、複数の障害を抱える可能性がある。先天性風疹症候群とその予防について、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)感染症部長の岩田敏医師に聞いた。

 ▽記憶より記録が大事

 風疹はウイルス性の感染症で、免疫のない妊婦が妊娠20週ごろまでに感染すると、胎児にも感染。生まれてくる子どもが、先天性の難聴や白内障、心疾患といった障害の表れる「先天性風疹症候群」になることがある。妊娠中に風疹ウイルスに感染しても、症状が出なければ気付かないが、そうしたケースでも先天性風疹症候群のリスクはある。

先天性風疹症候群の予防について、妊婦だけでなく社会全体で考えたい

 12~13年の大規模流行では、45人が先天性風疹症候群と診断された。今回は1月に1人の発症が報告されており、岩田医師は「今後、患児が増えるかもしれません」と懸念する。

 先天性風疹症候群の予防は、風疹の感染拡大をいかに防ぐかがカギとなる。風疹は一度かかるか、ワクチンの接種で体内に免疫が作られると、それ以降は感染しない。ワクチンを接種したかどうかは、母子手帳の「記録」で確認できる。ここで注意したいのは、子どもの頃に風疹にかかったという「記憶」だ。「似たような症状の病気もあり、誤って罹患(りかん)の経験があると思い込んでいる人は少なくありません」と岩田医師。

 ▽社会全体で風疹を排除

 風疹ワクチンは、子どもの場合、幼児期と就学前の計2回の定期接種が実施され、集団での免疫力が向上している。問題は大人だ。1979年4月1日以前に生まれた男性は、一度も定期接種を受けていない。また、年齢層ごとの風疹患者数を見ると、30代の人は中学生の時に定期接種を個別で受けるよう定められていたため、ワクチンの接種率が低かった可能性がうかがえるという。

 妊娠の可能性がある年代で、抗体価が低い女性は、ワクチンの接種が急がれる。ただし、妊娠中の接種はできない。妊娠を希望するなら、小児期の接種も含めて妊娠前に2回、ワクチン接種を受けておくことが望まれる。また、接種後2カ月は妊娠を避ける必要がある。

 風疹の拡大を抑制するため、国も対策を講じている。ワクチン接種の機会がなかった40~57歳(62年4月2日~79年4月1日生まれ)の男性を対象に、2019年4月以降、約3年にわたり抗体検査とワクチン接種が無料で受けられるというものだ。抗体価を測定し、抗体が不十分ならワクチンを接種する。

 岩田医師は「先天性風疹症候群をなくすには、妊婦だけでなく社会全体で風疹を排除することが不可欠です。罹患歴やワクチンの接種歴がはっきりしない人は、この機会にぜひ抗体検査を受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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