治療・予防

下肢の壊死から巻き爪まで
足の総合医療センター開設―順天堂大

看護師が弾性ストッキングの装用方について説明

看護師が弾性ストッキングの装用方について説明

 足の病を早期に発見して治療や進行予防を実施すれば、重症化することなく、歩行を長期に維持できるので、医療費の削減や健康寿命の延伸につながる。ただし、このように足の疾患に関する高度な治療を全国どこでも受けられるようにするためには、医療機関が費用を保険でカバーできる仕組みが必要になる。

 外反母趾の部分を圧迫

 同センターでの診察の1例を紹介する。かかりつけ医の紹介を受けて下肢静脈瘤外反母趾(ぼし)に悩まされている83歳の女性は、看護師のチェックの後、田中副センター長の診察を受けた。

 下肢を丹念に触診した田中副センター長は「足の裏と今履いている靴底を合わせてみると、足の裏が靴からはみ出している。つまり、この靴は足に合っていないので外反母趾の部分を圧迫してしまう」と、具体的に説明した。

実患者の靴を手に説明する義肢装具士の山口篤史さん

実患者の靴を手に説明する義肢装具士の山口篤史さん

 「すねの皮膚表面に浮き出た血管瘤は、足のむくみの原因。症状を進行させないためには、足先から太ももまでを覆う医療用の弾性ストッキングを装用し続けることが必要だ。ストッキングを正しく履くには、膝から上は少しずつ伸ばすようにして、しわやたるみを生じさせないようにしよう」

 ◇対応した靴を製作

 細かい指導をした上で、専門のスタッフが医師や看護師と連携しながら、石こうで足型をとって、外反母趾に対応するための靴を作る。京都市から週1日同センターに通っている義肢装具士の山口篤史さんは「どのような問題があり、何のためにこの靴を履くのか医師や看護師に説明し、理解してもらえれば、靴の履き方や使い方も適切になり、それだけ効果も大きくなる」と話す。

 田中副センター長も、「通常は医師が弾性ストッキングを履くように指示しても、適切な圧力のものを選んで正しく装用するところまでは指導しない。外反母趾でも、実際の状況を患者に納得するまで説明に時間をかける余裕はないだろう。経営的には厳しいが、患者との間で十分に情報を共有し、治療や日常生活の注意点をしっかり理解してもらうために時間をかけたい」と、センターの診療で心掛ける点を説明している。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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