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男性のがんと不妊 
精子の保存、情報提供に課題

 がん患者は男女を問わず、抗がん剤や放射線などの治療の影響で生殖機能が低下し、不妊になる可能性がある。治療法が進歩し、がんを克服できる人が増えている現在、男性不妊の対策として精子の凍結保存の重要性に注目が集まっている。横浜市立大学付属市民総合医療センター生殖医療センター(横浜市)の湯村寧部長(泌尿器科)に聞いた。 

精子凍結保存を行った患者(820人)のがん種の内訳

 ▽治療で生殖機能が低下

 がん治療によって男性が不妊になるのは、精巣がんで精巣を摘出した場合とは限らない。血液がんや他の臓器のがんでも、全身に照射する放射線の量や抗がん剤の種類によって、精巣の機能が低下し、精子数が減少したり、作られなくなったりすることがある。

 こうした不妊症の対策として進んでいるのが、精子の凍結保存だ。がんの治療前に取り出した精子を液体窒素のタンク内で保存し、将来、必要となった際に解凍して、体外受精で子どもを授かる可能性を残す方法だ。

 厚労省の研究班が2015年に行った調査では、全国で820人の男性が精子を凍結保存していた。白血病・リンパ腫の患者が全体の半数近くを占め、精巣腫瘍などがそれに続いた。

 精子の凍結保存は、がんを治療する主治医が不妊の可能性を説明し、患者が希望すれば男性不妊の専門家(泌尿器科医)に紹介され、カウンセリングを経て実施に至るという流れだ。

 だが、湯村部長は「患者はがん告知のショックが大きく、特に命に関わる場合のがん治療は一刻を争います。治療前の限られた期間で、不妊の問題を受け入れ、精子の保存を選択することは難しい場合もあるのです」と話す。主治医からの説明が不十分なまま、がんの治療が開始されるケースもあるという。

 ▽がん治療医と泌尿器科医の連携も

 しかし、若年がん患者では、社会復帰した後の人生も考えなければならない。「将来、子どもを望む患者への十分な情報提供や支援が課題です」と湯村部長。

 現在、がん患者が精子凍結保存の機会を得やすくなるよう、がん治療医と泌尿器科医との連携を促す動きが各自治体で始まっているという。また、厚労省の研究班で、若年がん患者が精子凍結保存を前向きに選択するための一助として、臨床心理士によるカウンセリングの導入も検討されている。「がんになっても子どもを授かる方法はあります。そのためにも、医療者ががん患者に精子凍結保存という選択肢を示していくことが重要です」 (メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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