医学生のフィールド

臨床実習もままならず、医学生に募る不安
進級は、卒業は…「柔軟な対策取って」と医学連

 新型コロナウイルスの感染拡大は、医学生の生活にも大きな影響をもたらした。医学部では休講やオンライン講義・実習などの臨時措置が取られたのに加えて、病院実習や研修病院の見学が中止となるなどして、カリキュラムの遅れに対する不安の声が上がっている。アルバイトができなくなり、経済的に困窮している学生もいる。

 オンライン取材に応じた医学生4人と聞き手(左下)
 全国25大学の医学部自治会でつくる全日本医学生自治会連合(医学連)は、医学生の相談窓口を設置するとともに、学生に対する支援を国など関係機関に求めている。オンライン取材で医学連の役員(信州大学医学部5年伊東元親さん、弘前大学医学部5年高橋亜実さん、群馬大学医学部4年有馬大樹さん、信州大学医学部3年田村大地さん)にインタビューし、学生の現状と要望について聞いた。(聞き手・稲垣麻里子、各学生の話をまとめて構成)

 ◇オンライン授業は双方向で進めて

 ―緊急事態宣言が発令されて以来、自粛中はどのような生活を送っていたのでしょうか。授業はどうしていますか。

 4月以降、多くの大学では講義や実習をオンラインで行うための環境が整えられ、さまざまな代替措置が取られています。病院への立ち入りは認められていなかったので、臨床実習も可能な限りオンラインで行われています。

 ただ、すべての大学でリアルタイムのオンライン講義が行われているわけではありません。先生によってはオンデマンドの授業やスライドが配布されて課題を出すだけの場合もあります。

 また、今までは対面で授業を受けていたので、互いの顔を見て、反応を見たり確認したりしてもらっていましたが、オンラインの場合、リアルであっても「一方的に講義が行われている感じがする」「授業のあと質問しづらい」という声が医学連に寄せられました。

 誰もが経験したことのない事態なので、大学や先生方が試行錯誤しているのは仕方ないかもしれませんが、このやり方でいいのかどうか、授業の内容が理解できているのかどうかを、双方向で確認し合いながら授業を進めてもらえるとよいと思います。

 ◇試験に向けたスケジュールが分からない

 伊東元親さん
 ―学生の声として一番多かったのはどんなことでしょうか。

 講義、実習、共用試験(臨床実習開始前に行われる評価試験)、国家試験などについて、今後のスケジュールが分からなくて不安、という声が一番多かったです。

 本来、医学部は医師国家試験に向けて、きっちりとしたカリキュラムが組まれ、国家試験に向けて日々の試験や実習を一つずつクリアしながら進んでいくので、例年のスケジュール通り進まないとどうなるのか。無事に進級や卒業ができるのか、多くの学生たちが不安を抱えています。大学や指導する教授によって対応がかなり違うため、進度に差が出ていると思いますが、自分がどんな状態なのかも分かりません。

 スケジュールが決定するまで発表できないというのも分かるのですが、今どこまで決まっているのか、いつ決定されるのか、その時点での状況を教えてもらえれば、多くの不安は払しょくできると思います。

 ―大学とのコミュニケーションの問題ということですか。

 一部ですが、学生に対して高圧的な態度を取っている大学もあると聞いています。

 その一方、学年ごとに、学長がオンラインで直々に学生たちに状況を伝え、学生の声に耳を傾けるという対話の形式の会を開催している大学もあると聞いています。フィードバックを繰り返し、自治会との連携も密に行い、学生に向けてまめに情報発信を行っているので安心できます。非常事態を一緒に乗り越えようとする姿勢で接してくれたことで、教員と学生の信頼関係が深まったようです。

 国や大学からの発信も大事ですが、学生にしか分からないこともありますので、学生からの声も大切にして、耳を傾けてほしいと思います。自分たちの問題として声を上げる学生は少なくないと思います。


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