潰瘍性大腸炎、患者22万人以上
治療で健康人と同じ状態に
~安倍首相辞任の要因~ 鳥居内科クリニック院長 鳥居明医師
2回にわたり安倍晋三首相辞任の理由になったことで、再び関心を集めているのが「潰瘍性大腸炎(UC)」だ。完治に至る治療法がなく、発病原因が不明で厚生労働省が「難病」にしている。このため珍しい病気と捉えられることも多いが、現在の患者数は22万人以上で決して少ないとは言えない。専門医は「ほとんどのケースは、必要な治療を続けて症状を抑え込めば、健康な人と同じ状態と言える『寛解(かんかい)』に持ち込み、維持できる。早期の受診と治療の継続が重要だ」と話す。
記者会見で厳しい表情を見せる安倍晋三首相=首相官邸 2020年08月28日【時事】
◇腸に炎症
UCは直腸と結腸で構成される大腸に炎症が起き、腸管内がただれたり潰瘍が生じたりする「炎症性腸疾患(IBD)」の1疾患だ。直接の原因は不明だが、ストレスなど周囲の環境の影響や体内の免疫系の異常など複数の要因が影響し合っているとみられている。
自覚症状としては、持続的に粘液と血液が混じる血便(粘血便)や通常の血便が目立つほか、下痢や腹痛などが挙げられる。これらの症状が改善する「寛解期」と再発する「再燃期」を繰り返すことが多い。
◇さまざまな治療法
「ここ10年でさまざまな治療法が登場し、治療は大きく変わった。多くの場合は薬物治療で寛解を長期間維持し、発病前と同じような生活が可能だ」。40年以上IBDの治療・研究に携わってきた元東京慈恵会医科大学助教授で、現在東京都医師会理事を務める鳥居内科クリニック院長の鳥居明医師は、近年の治療法の進歩をこう総括する。
潰瘍性大腸炎の患部写真(治療前と治療後)=国立成育医療研究センター提供
◇炎症抑える薬が基本
最初に投与されるのは炎症を抑える「5ーASA」と呼ばれる薬で、治療の基本となっている。症状に応じて用量や薬の形を調整しながら、患者は継続的に服用する。この薬で炎症が治まらない場合には、炎症を抑える力の強いステロイドが加えられる。
以前は内服剤しか使えず、全身への副作用が心配だった。現在では泡状のステロイド剤を肛門から腸に入れる。局所に少量を集中的に投与することで、十分な効果と副作用の回避の両立が可能になっている。
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(2020/09/01 12:59)